オリジナル小説
□十六ページのミステリー
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十六ページのミステリー 金谷 一二三
安達カナタと出会ったのは忘れもしない去年の九月三十日のこと。
その日はここ華水坂学園高校の文化祭の日だった。
あたしは友達の真理奈と高校の下見と銘打って、遊びに来ていた。
華水坂学園の文化祭は三日間開催されるのだが、大抵、文化祭の一日目は前夜祭になって学内での発表会やフォークダンス、仮装行列など、完全に学校行事の一環であまりお祭りといった感じではない。
そうすると出店やフリマなどのお楽しみは必然的に一般公開日の二日目と三日目になる。
その二日目はというと中学の文化祭の出し物の当番であたしと真理奈はろくに見てまわることはできなかった。
だから三日目こそ、高校の文化祭に行き、文化祭ならではのお祭り気分を楽しもうと決めていた。
駐車場がこむから早めに行っちゃった方がいい、と九時前に真理奈のお母さんの車で学校へ出発した。
バイパスを通って三十分、華水坂の市内に入る。
それから、華水坂学園高等学校≠ニ書かれた案内板に従い、車は細い通学路に入った。
その道は例年では珍しく渋滞している。
前が詰まっていると思ったら、すぐさま後ろに並ばれ身動きが取れなくなってしまった。
「失敗した。大通りから入った方が良かったかも」
これじゃUターンもできない、と真理奈のお母さんはチッと小さく舌打ちをした。
そう言ったところで後の祭りだ。
待てど暮らせど前は進む気配がない。
「……お母さん、私達はここで降ろして」
と、真理奈が業を煮やしたのかそう言い出し、あたしたちはその場で降ろしてもらうことになった。
高校まではまだ一キロ近くあるけど、道は知っているから歩くことにした。
「じゃ、お母さんはここ抜けられたら付属中の駐車場に行くから。
真理奈、帰る時は携帯に入れて」
真理奈のお母さんは手短に言ってから、楽しんでおいで、とあたしにも優しく声を掛けてくれた。
あたしは送ってくれたお礼を言うと真理奈のお母さんはあたしたちにひらひらと手を振るって、詰まりまくっている前を睨みクラクションを鳴らした。
「ありがとね。真理奈」
「いいって。どっちにしてもお母さんも文化祭に来る予定だったから」
あたしたちが学校に着いた時にはまだ校門は閉まっており、校門前は開門待ちの人たちでごった返していた。