Others
□暁月夜の夢(S.Y.K)
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――夢を見た。
私は、迷っている。
自分の部屋がどっちだったか、分からなくなっていた。不思議なぐらい誰にも遭遇せず、広い廊下を一人だけで歩いていた。
可笑しいなぁ……。誰にも会わないなんて。
そんな独り言も誰も居ない空間に寂しく響いた。
ふと足を止め、廊下から外に目線を移す。
そこにはいつもの天界の風景。
緑が生い茂り、天花が咲き誇る鮮やかな土地。
湖の水は澄み切って、中に浮いた島々から流れ、滝を作る。
美しい、なのに全然心が動かされない。
見なれているからなのか、嫌、それだけではない。
感じない。何も。心が動かない。あの日から。
思えば、私は私自身で世界を感じていたのだろうか。
どれもこれも大聖を通して見ていただけ、なのではないか。