novel『復活』vol.3短編N
□引力の虹
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徹夜明けの今日。
現在時刻は昼前時。
一応パジャマを着替える。
まだ寝ぼけた頭でフラフラと寝室を出た。
「ツナー」
台所を覗いて見ると、テーブルの上に一通の書き置きが目に止まった。
[子供たちと買い物に出掛けて来ます。お昼ご飯は冷蔵庫の中にあるから食べてね。ツナ]
隼人は、愛おしむ様にその字を眺め、丁寧に折るとポケットの中にしまい込んだ。
せっかく用意してくれてるが。
でも、ご飯を食べる気分ではなくて。
隼人はリビングのソファに腰を落ち着けた。
誰のの声もない。
シン、と静まり返った我が家。
たまには静寂が恋しいと思っていたけど、今は騒然とした賑やかさが恋しい…
(なんて、な)
残暑が運ぶ夏の名残の風は、気持ち秋を含んでいて。
陽射しは、少しは柔らかくなったものの、昼を過ぎれば夏の顔に戻る。
ピッ
クーラーを作動させる。
設定温度は、環境に優しく27度。
これ以上下げるとツナに厳しく叱られてしまう。
(もう慣れたけど)
少しずつ下がり始める室温を感じながら、隼人はうとうとと夢の中へ…
ピンポーン
無粋な機械音に寝入りばなをくじかれ、かなり不機嫌な隼人は眠い目を擦りながら玄関に向かった。
「ハイハイ、どちら様…」
玄関のドアを開ける。