novel『復活』vol.3短編N

□セパレイトブルー
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「ねぇ、どこ行くの?隼人」

「もう少し我慢してくれるかな」

そう言われてどのぐらい経つかな?
と、ツナは溜息をついた。

隼人の車に乗せられて、目的地も告げられず、隼人は車をひた走らせる。

その助手席(となり)には…
アイマスクで目隠しさせられたツナの姿。

「まだ外したらダメ?」

「目的地に着いたら」


………ハァ。


外の景色を見る事も許されず。
ツナは退屈しきっていた。


(左、左、右、左、右…)

家から出て近所までは頭の中の地図で大体の見当をつけていた。
が、どんどん遠ざかる。

どのぐらいか、もう見当さえつかなくなった。

車の中は隼人の好きなCDが遠慮がちな音量で流れている。

「…ねぇ」

「ん?」

「何が見える?」

「ヒミツ」

そう呟く隼人の声が軽やかに震えた。

何だか楽しそうに笑っている…?

「ねぇ…」

「何?」

「つまんない」

「ごめん。もう少し辛抱して」

あ、今度は苦笑い?
ちょっと困らせちゃったかな?

ツナはそっと右手を伸ばす。

一人だとプカプカ燻らす煙草も、家族が乗ると決して吸わない。
だから…

(左手が空いてるの、知ってる)

伸びてきたさ迷うツナの手を横目に見つけて、隼人は指を絡ませ優しく握り締めた。

「着いたら起こすから、寝てていいよ、ツナ」

「ヤだ」

折角子供たちも居ないのに。
二人きりになれたのに。
寝るなんて勿体ない。

そう反論したら隼人は顔を真っ赤にするだろうな、とツナは小さく笑った。

「何?」

「ううん、なんでもないよ。隼人」


終着点はまだまだ先らしいし。
とりあえずは、この優しい空間(シアワセ)満喫しなきゃ、ね。

ツナは瞼の向こう側の愛しい存在(ひと)に微笑みかける。
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