novel『ロックマンエグゼ』vol.4短編
□『君の後ろ姿』
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「じゃあな、炎山!」
眩しい笑顔を振り撒きながら、そう言って熱斗は。
無邪気に片手を振った。
「あぁ」
素っ気なく返す俺なんか気に掛けず。
熱斗はクルリ、踵を返して背中を向け。
夕暮れ時の街中を、急ぎ駆けて行く。
パタパタと駆ける、軽い足音。
ちょっと大きめな鞄が、勢いよく走る振動で忙しなく上下に揺れる。
時折、大きく頭が左側に傾く。
自分のナビと会話でもしてるのだろうか。
屈託ない横顔が。
はっきりしない話し声が、雑踏のノイズに混ざっては消える。
次第に、小さくなる背中。
それが建物の角を曲がったのを見届けて。
俺は、溜まっていた何かを吐き出すかの様に、小さく溜息を吐いた。
(人の気も知らないで・・・)
胸の中で、そう呟き捨てて。
癖になりつつある、何度目かの溜息と同時に。
力の抜けた背中を、近くの壁にもたれ掛かせながら。
はた、と気付く。
これでは、まるで。
愚痴にも似た八つ当たりだ、と。
伏せた両瞳を閉じて思う。
(・・・いや。これで、いいんだ)
これで・・・