novel『ロックマンエグゼ』vol.1短編N

□『結葉』
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「…ゴメン…」

譫言(うわごと)の様に、謝罪を繰り返す熱斗に。
俺は憤っていた。
もちろん自分自身に。

昨日の内に気付いて処置していれば、ここまで悪化させなくても良かった。
熱斗に、苦しい思いをさせなくて済んだハズ、なのに。

…俺は、…

大切な存在(ひと)の微かなシグナルにも気付いてやれない…

ただ後悔の念だけが、胸を強く渦巻き締めつける。

「…すまない」

事後的に謝るしか出来ない俺。

情けなさで泣けてきそうで。
背中を向けていたら。

「…謝るの、俺の方、だろ?」

重い身体をよじって、伸ばした左腕が俺の服の裾を掴んで、小さく引っ張った。

振り返ったら、
「…な?」
と、精一杯の力を讃えた鳶色の瞳が、そこにあって。
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