novel『ロックマンエグゼ』vol.2長編
□『追憶の中の君へ』-4
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「分かった」
そう言うなり、「行くぞ」と立ち上がった炎山に、
「え?」
目が点になる。
「行きたいんだろ?」
ほら、と炎山の右手が促す。
「え、だって…炎山、仕事あるんじゃ?」
嬉しいけど…
昨日も一昨日も、自分の我が儘に振り回してばかりだし。
なにより、炎山はIPCの副社長だし。
仕事だってたくさんある。
自宅にまで持ち帰る程、たくさん。
その大変さは見て知ってるつもり。
なのに…
なのに、そんな貴重な時間を、俺なんかに使ってくれて。
…いいのかな?
俺はそれに甘えっ放しで居て、いいのかな…?
「…ホントに、いいのか?」
心配と不安に駆られて熱斗は尋ねた。
「今日は午後から休みを貰った」
だから平気だ、と炎山は笑う。
「俺だってたまには休日ぐらい取るさ」
それでも「でも…」だの「ホントに?」と、遠慮して外出を渋る熱斗の右手を、強引に掴んで椅子から引き剥がすと。
たたらを踏んで、熱斗が立ち上がった。
「俺の気が変わらない内に決めろ」
行くのか、行かないのか?
どっちだ?
頭上から責め立てられて。
熱斗は、決めかねてる様に唸りながらも、
「…行く」
と、消えそうな声で甘える事にした。