novel『ロックマンエグゼ』vol.1短編N

□『景色』
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…母さん?

   −ここよ。炎山−

…どこ?

   −こっち。こっちよ−

見えないよ、母さん…どこに居るの?

   −私はここに居るわ。炎山…−

母さん!!




…あぁ。これは夢だ。

そう判断出来たのは。
そこに在る自分の姿が、5歳の頃のモノだったからと。
母親が亡くなってから、しばらく見てた夢の内容でもあったせい。

漆黒に塗り固められた世界で。
独りきり。

怖くて、寒くて、不安で。
泣いてばかり居た。

そこかしこから求めてる声がするのに。
どこから聞こえてくるのか、見当もつかず。
唯々、混乱して、途方に暮れるダケ。

冷たくて暗い、ここが全て。
絶望だけが、揺るぎない自分そのものみたいで。

俺には何もない…

暗闇に居ると、溶けて消えてしまう…
そんな錯覚に、ゆるゆると蝕まれてしまう。
終わりの見えない夜に敗北してしまう。
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