短編

□優しいオレンジ
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夕日が部屋の中を優しく包む




白銀の髪を紅く染め、寝息をたてる貴方





この幸せな時を…何時までも

















優しいオレンジ






















「隊長、もう!…隊長!」





机にうつ伏せに寝ていた俺を呼ぶ声。






「うぅ〜ん…」



俺は重い瞼を無理やりに開き、自分を呼ぶ人物、そう俺の彼女名無しななしを見上げた。









「おはよう、ななし。」






「おはようって、もう夕方ですけど。」




少し呆れた顔をするななし。



俺は意識が完全に戻り頭をかかえてぼやいた。






「やべ、書類終わってねぇー」





ここ3日間書類整理に追われろくに寝ていないせいか、自然と落ちてしまっていたようだ。








「隊長、今日は帰った方が良いんじゃないですか?



松本副隊長も帰ってしまったことですし…」




ななしは心配そうに眉尻を下げこちらを見つめる。



ほんと可愛い奴だな。


もっと困らせて俺のことだけ考えさせたい。



なんて柄でもない事を思いながらななしを見ていた。
















「ななし。」





「はい?」






「隊長じゃなくて、冬獅郎だろ?」







真面目な性格のななしは”冬獅郎”と呼ぶ事に抵抗があるのだろう。




少し照れたように目を逸らす姿を、


どうしようもなく愛おしく感じた。
















「冬獅、郎?」






「ん?」








ななしは頬を紅く染め、嬉しそうにはにかむ。




俺はそんなななしに堪らず抱き寄せ、藤色の柔らかい髪に鼻を寄せた。




「冬獅郎!?」



驚く声を無視してななしの香りや体温、感触を楽しんだ。





睡眠時間もないこの辛い時期、ななしと居る時間が一番落ち着く。






少しの間そうしているとななしの手が背中に添えられるのがわかり、俺の中で何かが切れた。





スッと頭の後ろに手を移動させこちらに向かせると強引に唇を重ねた。




「っん」






ななしの口から吐息が漏れ更に深く口づけた。



舌が絡まり水音が部屋に響く。



















味わうようにキスを楽しんでいると、トントンと胸を叩くななし。


名残惜しく唇を離すとななしは苦しそうに息を切らせていた。






「…エロいな。」





「もう!」



これでもかと顔を真っ赤にさせ怒るななし。




「わりぃ」








しまった。



手加減できなかったと視線を逸らし頭を掻く。














「冬獅郎…」





呼ばれて視線を戻すと唇に何か触れた。




チュッとリップ音がしてキスされていることに気づくと、脈が早くなるのを感じた。








「仕返し」







悪戯に成功した子供のように笑うななし。




俺もつられて口が緩む。


















夕日が窓から差し込み、優しく二人を包み込む。








オレンジ色に染まる時。




この幸せな時間を何時までも。


























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