短編

□あの頃A
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ヴヴヴっとスカートのポケットに入っているスマホか震えた。





私は態勢を変えてポケットからスマホを取り出すと通話ボタンを押す。







『もしもーし』



「なに悟」



『今日飯行かね?』



「良いけど帰れたらね」




『は?どこに居んの?』







「…牢屋?」



『は?ウケる、遂に犯罪に手を出したのか?』





「んなわけ無いじゃん!ちょっと事件ぽいのに巻き込まれて閉じ込められちゃったんだよね〜」





『え?冗談でしょ』





「それが大マジ、幸いな事に呪霊じゃなくて人間だから大丈夫だよ」




『大丈夫な訳ないだろ、すぐ行く』





「ありがと助かる」








『何か見えるものある?』




「うーん手足縛られてるからな、波の音は聞こえる」




『わかった、確認だけど何かされた?』





「ちょっと体触られたかな」



『よし殺す』



「人だからね」






『…死なない程度に殺す』



「それじゃ悟が牢屋行きじゃん」





『んま、少し待っとけ絶対助けるから』





「待ってる」








態勢を変えて後ろ手に通話を切るとふーっと息を吐いた。




スマホ取られなかったのはラッキーだったな。





GPSとかで場所もすぐ割れるだろ。





私はお世辞にも綺麗とは言えない簡易な部屋を眺める。





檻は壊せそうだけど手足が問題ね。





何か使えそうなものないかな?





周りを見渡すが何も無い。





とりあえず悟が来てくれるの待つか。


















それからすぐに悟は来てくれた。





何故か傑と硝子も一緒に。





部屋に入って来るなり悟は強引に柵を蹴り倒し、おかげでぶわっと舞い上がった埃で目が痛い。





「ごほっごほっ…もう少しスマートに開けられないの?」






床に倒れている私は咳込んで愚痴を垂れた。






「うっせーな。こんな弱っちい人間に捕まりやがって。」






右手にはサラリーマン風の中年の男、元い私を拉致った男が胸倉を掴まれてダラリと脱力している。





すかさず悟の脇を通って抱き起してくれた傑はパッパッと手と足の拘束を解いてくれた。





「ななし大丈夫か?」




「ありがと、大丈夫!皆んなで来てくれたんだね。」





「ななしのピンチに来ないわけないだろ?」





傑は地面で汚れた私の頬を手で拭ってくれた。







「あっ!おい!!」




先を越された悟は声を上げて手に提げていた男を投げ捨てた。





「怪我してたら大変だからな」




硝子もちゃっかりとななしの側に座って怪我が無いか確認している。





「硝子ぉ」




優しい二人に涙腺が緩みだす。





「俺が場所を突き止めたんだぞ。」





悟は声を荒らげ傑との間に割り込んできた。






「悟もありがと、皆大好き!」






自分が思っていたよりずっと不安に感じていたのだと三人の顔を見てわかった。





照れ臭そうにしながら差し伸べてくれた悟の手を握って私は立ち上がると服に着いた埃をパンパンと叩いた。






「じゃあ帰ろっか!」





「晩飯なに食べたい?」





「うーん寿司かな。」





「いい案だね。」





「傑は連れて行かないからな!」





「おい。こいつどうする?」






平常通りの会話が繰り広げられる中、硝子が部屋の端に転がった男を指さす。






「放ってこーぜ。もう何もできないよソイツ。」












私達は男をそのままに四人で回らない寿司屋に向かった。
































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