短編

□あの頃@
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「硝子、私のスカート知らない?」



「スカート?知らないな。」



「おかしいな着替えた時ここに置いたと思ったんだけど。」




ななしは自分の机の上に乗った制服を一枚づつ広げて紛れていないか確認する。



するとちょうど悟と傑が教室へ入ってきた。




「ねぇ二人とも私のスカート知らない?」



「は、はぁ?ななしのスカートなんて俺が知るわけないだろ。」



「…私も知らないな。」




教室の中にしばしの沈黙が流れる。




「お前ら変だぞ。」




硝子は何故かソワソワと落ち着きがない二人を睨んだ。




「変じゃねーよ、いつも通りだろうが!」




傑沈黙。



ななしは二人に詰め寄る。




「本当に知らないんだよね?」



「俺が知るか!」




傑沈黙。



ななしはわざとらしく人差し指を口に当てると、疑うように目を細めた。




「…私、隠し事する人嫌いなの。」



「悟が破った。」



「おい!!」




あっさりと即答した傑に焦りを隠せず言い訳を始める悟。




「俺は落ちてたのを拾っただけだ!それにあれは傑のせいでもある。」




ななしは腕を組むと二人を睨みつけた。




「おい。知ってんじゃん。」



「クズ共、説明しろ?」



硝子はドス黒いオーラを纏っている。
















1時間ほど前。



「おーいななし、飯行こうぜーって…誰も居ねぇのか。」







窓から二つ目の席に制服が置かれているだけで教室には誰も居ない。





ななしが着替えてるってことは外か。





「ん?」





その机の下に何か落ちている。





拾い上げて広げるとななしの短いスカートだった。












「ななし昼はどうす…」





タイミング悪く教室へ入ってきた傑の表情がみるみると変わっていく。







「…え?何その遠い目!違うから!」




「流石にそれはやめたほうがいい。」




「いや、だから誤解!」




「とりあえず手を放そうか悟。」




傑は悟からスカートを奪い取ろうとした。




が、びくともしない。




「…手を離してくれ。」




「…なんで傑に渡さないといけないんだよ。」






「…」





「…」








両者一歩も引かず睨み合いが続き、遂に耐えられなくなったななしのスカートはビリっと無残に音を立てた。



























「…という事だから俺は拾っただけ!悪いのは奪おうとした傑だ!」





「人聞きが悪いな。奪おうとしたわけじゃない、悟が厭らしく眺めてたのが悪い。」





「はぁ?眺めてねぇ!」





「もういいから!」





擦り付け合いが終わりそうにないので、二人の間に割り込み破けたスカート出してと手を出した。






悟は自分の席に掛けてあるカバンを開けてスカートを出しななしに手渡した。





「ちょっと待て…持って帰る気だったの?」





ななしは引いた目で悟を見た。




「違うから!ななしが想像しているようなことは一切ない!」




「私は止めたんだ。」




「傑黙れ、ややこしくなる!」




「バカだ。」




悟と傑が言い合いをしているのは放って置いてスカートを広げてみる。



見事に縫い目のところから5p程破れていた。




「これは穿けないな。」




「ななし直してきてあげるよ。」




「え、本当に?いいの?」



貸してと硝子がスカートを受け取る。




「応急処置みたいなもんだから、新しいスカートは頼んでおきなよ。」




「硝子神!大好き!」



ななしはがばっと硝子に抱き着く。




その光景を見ていた二人は複雑そうな顔だ。







「…俺が家に頼んで綺麗に直してやるよ。だからほら。」




両手を広げて待ち構える悟。




「…何?しないわよ?例え直してくれたとしても。」





「なんで!こんなにイケメンなのに?」




悟はサングラスを外した。




「性格もイケメンならね。」




















ななしはその日一日ジャージで過ごした。


















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