短編

□押してダメなら
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カカシさん…かっこいい。






あぁ、ずっと見ていたい。






好き。









ななしは待機所で本を読んでるカカシを見つめていた。






「……あのさ、そんなに見つめられると穴が開きそうなんだけど。」






「わっ!す、すみません!」






そう言い慌てて目を逸らすななしを見てカカシは呆れ息を吐く。






「あと、声に出てたからね。色々。」





「!?」






ななしは信じられない…否、信じたくないと目を真ん丸にする。






カカシはその様子を一瞥すると再び息を吐き、開いたままにしていた本へ視線を落とした。






心の声が駄々漏れだったことを指摘されななしの顔はみるみる熟れたリンゴの様に赤くなる。






咄嗟に側に置いてあった雑誌を引っ掴むと広げて顔を隠した。






その一連の流れを隣で見ていた紅とアスマは堪え切れず豪快に笑う。






「あー笑わないでくださいよ!」






熟れた顔で声を上げるも効果はなく、二人は涙を溜めて未だに笑っている。






「もう!ひどいです!」





ななしはムッとして口をへの字にした。






「ごめんなさい。ほんと、可愛いくて。」






涙を拭いながら言う紅の言葉に、ななしは打って変わって可愛い?と呟き嬉しそうに目を輝かせる。






「カカシのどこがいいんだか。」






同じように目を擦るアスマの言葉をななしは聞き逃さない。






「カカシさんは強くて聡明で、厳しい中にも優しさがあって眉目秀麗!大人の余裕と色気もあるし神秘的な雰囲気がまた堪らない、そう言う所が良いんです!!」







勢い良く言い切ると待機所の中はシーンと静まり返った。







「…どーも。」






怒涛の誉め言葉を涼しい顔で聞いていたカカシは視線を上げずに抑揚なく答える。






ななしはどうしようもなく恥ずかしくなって待機所を飛び出した。










「行っちゃったわよカカシ?」





紅は心配そうにななしの出て行った方向を見る。






「気にしなくていいよ。いつもの事だから。」





カカシは何事もなかったかのように愛読書のページを捲った。


































またやってしまった。






私は頭を抱えながら悶々としていた。






カカシさんを見ると好きで好きで堪らない気持ちが抑えきれなくて、会う度に告白するような形になってしまう。






そして適当にあしらわれるいつものパターン。






初めて好きと伝えたのは中忍になってすぐの頃。






嬉しいよありがとうとその言葉だけで舞い上がった。






遠くの存在だったカカシさんにやっと認識してもらえたと喜んだ。






それから何度もアタックを続けて今に至る。







親の反対を押し切って忍になり、カカシさんの(自称)永遠ライバル、ガイさんに弟子入りして鍛錬も欠かさずこなした。






想い続けて二十余年。






だから、この恋もちょっとやそっとじゃ諦めないと決めている。






好きな気持ちを好きって伝えて何が悪いんだ!







逆に良いことだよね?






うん、そうだよと言い聞かせて。






そして毎度のごとくすぐに開き直る。









「お!ななしさんじゃん。」





顔を上げるとシカマルがポケットに手を入れて立っていて、猪鹿蝶がそろっていた。





「俯いてるから元気ないのかと思った。」





いのが驚いた顔で言うので傍からはそう見えていたのかとグーっと親指を上げて笑って見せる。






「問題なし!!」





そうみたいねと、いのは引いたように笑う。





ガイ先生に似てきたなと心の中で思う3人。





「ところで何してるの?」





「久しぶりに3人の時間が合ったから一楽のラーメン食べに行くんだよ。」





満面の笑みのチョウジはテンションが高い。





「ななしさんも来る?」




「いいの?」





キラキラと目を輝かせるななしに断る理由もなく4人で一楽へ向かった。











運よく並ばずに入店すると各々注文を終わらせた。






「ところでななしさんはあそこで何してたんすか?」





頬杖を付いたシカマルがこちらを見る。





「久しぶりの休みで待機所に遊びに行ってたの。」






「休みなのに何でわざわざ待機所?」





信じられないという顔をしたかと思うと、少し間を開けて友達いねぇのと真面目な顔で問いかけてくので全力で否定した。





「あれじゃない?カカシ先生。」





いのが言うとななしはご名答とウインクした。






「ほんとななしさんはカカシ先生好きだよね。」





チョウジは言いながら割り箸を割りすでにスタンバイしている。






「好き大好き…でも全然相手にしてくれなくて。」





「またやたらに好き好き言いまくってたんじゃないの?」





「そんなことないよ!今日はそんなに言ってない!」






「でも言ったんだ。」







いのとシカマルはその光景を何度も目撃しているので呆れている。







「ななしさん黙ってたら可愛いのにね。」





いのは至極残念そうに言う。





「可愛い?」





「そこだけピックアップしないで。」






「ごめん。」






「もっと大人の女性らしく。慎ましく、優雅に、もちろん好き好き言うの禁止。少し距離を置いてみるのも一つの手よ!」







「えー!!無理だよいのちゃん…」







「できる!まずは一ヵ月実践してみましょ。」







そんなの拷問だよと項垂れるななし。







美味しそうなラーメンが到着し、いのの言葉を考えながら食べ進める内に一ヵ月だけなら頑張ってみようかなと謎にやる気が出てきた。








チョウジがおかわりを完食するのを待ち店を出ると3人に向き直る。






「いのちゃん、シカマルくん、チョウジくん!私頑張るね!!」






勢いよく振り上げた拳をゆっくり下すと、先程とは別人のようにななしは穏やかに微笑む。





「ごきげんよう。」





軽くお辞儀をして去っていくななしの背中をポカンと口を開けたまま見送る3人。








「ごきげんよ。」




「ごきげんよう゛ッ。」





「ちょっと何赤くなってるのよあんた達。」





いのに脇腹を小突かれたシカマルはいてぇと眉間に皺を寄せた。






ななしの背中を見送りなら大丈夫かしらといのは呟いた。

















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