短編

□白驟雨
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任務帰り、空が曇ってきたかと思うと突然の豪雨に見舞われた。







びしょびしょに濡れながらやっとのことで雨が凌げそうな木の根の空洞を見つけ、カカシとそこへ避難した。







「すごい雨。」







「こりゃ止みそうにないね。」







遠くまで黒い分厚い雲が続いているのを並んで確認する。








「仕方ないからココで一泊するか。」





「そうだね。」






カカシの言葉を聞いてガッカリした。




当然この雨の中帰るよりはまっしだけど今日こそはふかふかのベッドで横になりたかったな。







「そんな落ち込まないでよ。」





顔に張り付いた髪を払いながら、カカシは奥の木の出っ張りに腰掛けた。






「何でカカシは嬉しそうなのよ。」





束ねていた髪を解いて毛先を軽く絞りながら同じように座る。






「えっわかる?」






「…なんとなくね。」






この笑顔はどこからくるのか。





にこにこと笑いかけてくるカカシに、はぁ〜と溜息を付いてベストのファスナーを下げた。








濡れた服が肌に張り付いて不快だ。







脱ぐわけにもいかず、とりあえず何もしないよりまっしだとベストの端を絞る。







その様子をじっと見つめてくるカカシ。






「…脱いじゃう?」





無視した。





「何で無視するの傷つくよ?」







「…何考えてるのよ。」







「そりゃー色々。」






ジトーっと睨むと焦った様に喋り出す。






「ほら、濡れたままだと体温奪われるし交代で外確認したら敵が来ても大丈夫でしょ!」





カカシは人差し指を立てて説得してくる。






「最もな意見だけど、敵は内部にいるのでは?」





「え、ひどいなぁ〜」





否定しない辺りとても怪しい。






「じゃあ後ろ向いてるから。」





私の意見を無視して勝手に背を向けて外を確認するカカシ。







仕方ないか。





正直、体が冷えて寒かったので素直に従う事にした。





ベストと肌着、ズボンを脱いで下着になると急いで絞れるだけ水分を絞り出した。





足元の褐色の土が濡れて濃く色付く。






肌着に腕を通し頭をから被ったところで後ろから包まれた。







「ちょっと!」





「身体、冷たくなってるね。」





耳元で囁かれぴくりと反応し自然と体に力が入った。





「離してカカシ。」






「温めてあげようか?」





「もう、冗談はやめてよ。」






そう言って抱きしめられていた手を解く。






肌着の裾を下ろしたところで文句を言ってやろうと振り返ると、カカシの顔が触れてしまいそうな位置にあって視線をはずした。











「…冗談じゃないよ。」






その言葉に一歩後ずさると腕を掴まれ逃げるのを阻まれた。






空いている手で顎を上げられ必然的に逸らしていた目が合う。








カカシは口に当てていた布を下ろし噛み付く様に口づけてきた。





「っん…」






カカシの舌が私の口内に割り入ってくる。





抵抗するも男の力に勝てるはずもなく、抵抗すればする程深く舌を絡め取られる。






「んぁ…や…」







いつの間にか頭の後ろを抑えられていて完全に逃れられなくなっていた。







深く深く求められて呼吸ができない。





苦しい。







背筋がゾクゾクとして力が抜けた。





やっと唇が離れて酸素を思い切り吸い込むと、倒れない様に抱き止めてくれたカカシにしがみ付く。







生理的に涙目になった顔を上げてカカシを見上げると、何故か悲しい表情だった。
























「好きなんだななしの事が。」






真剣な目に冗談は含まれていなくて、自分の中で鼓動が煩いくらいに響いている。






















「順序が逆でしょ…」






「ごめん。」















「…カカシのこと嫌いじゃないよ。」






「なにそのまわり口説い言い方。」



























「…好きだよ。」







カカシの驚いた顔が少し可笑しかった。








「ねぇ。」






「ん?」







「温めて。」







「もちろん。」









粒の大きい雨が地面を叩く音を聞きながら、冷たくなった体をお互いの肌で温め合った。











雨はまだまだ止みそうにない。
















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