短編

□確信犯
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「カカシ先輩、しっかりしてくださいよ。」



ななしは自分の肩へと寄りかかる、支え無しでは今にもテーブルへと突っ伏しそうな先輩に声をかける。




「う〜…」



カカシ先輩はただ唸るだけで一向に体を離してくれない。




どうしたもんかな…




ななしはこの状況に困り果てた。



このまま放って帰る訳にもいかないしな〜。
















事の始まりは3時間前。




半年ぶりにカカシ先輩と二人での護衛任務。


尊敬する先輩に迷惑をかけまいと緊張しながら任務にあたり、その甲斐あってか何事もなく木ノ葉の里へと帰ってきたのだった。



里の門をくぐったところでカカシ先輩から、「これから予定あるの?」と尋ねられ、私は少し驚いた。



「い、いえ。特に予定は無いですけど…」




「じゃあさ、飲みに行かない?お腹もすいてるしさ。」





確かに。


緊張が解けたせいか急にお腹が空きだした。





























私たちは適当に居酒屋へと入ると、二階の奥の席へ案内された。


正直カカシ先輩から食事のお誘いをされるなんて思ってもみなかったので、私は嬉しくて少し舞い上がっていた。





階段を上がり案内された席は対面ではなく横並びのソファー型の椅子で、正面には大きめの窓がありキラキラした通りが見える。




何だか個室みたいな感じだな。



ソファーの背が高いため半個室のような席だ。



「カカシ先輩奥どおぞ。」




奥の席は壁と面しているので手前側が料理を受け取ることになる。


先輩にそんな手間をかけさせたくない。




「いいよ〜ななしが奥いきな。」




そんなことを知ってか知らずか、俺トイレ近いからさ、なんてへらっと笑うので仕方なく奥へ座った。





一杯目をビールで乾杯し、中盤あたりから日本酒へ切り替えた。



私はこう見えて結構お酒には強い方だと思っている。



先輩も弱くないのか同じペースで飲んでいた。


この時点では…








暗部時代のヤマト先輩の話をしている時、急に肩に重みが乗った。





えっ?





「…カカシ先輩?」








「…」






返事はなくぐったりしている。



まさか寝てる?




そっと顔を覗き込むと目が閉じられていた。



「…」



私の思考は停止した。







それから冒頭である。





















ただ疲れて寝ているだけなのか、それとも酔い潰れてしまったのか、今まで一緒にお酒を飲んだことがなかったのでわからない。








どうするべきか悩んでいると、更にカカシ先輩が倒れこんできた。


テーブルへぶつからないように必死で支えるが男性の重みに耐えられず、壁とカカシ先輩にサンドされる形になった。




あーどうしよう。



もう一度カカシ先輩の顔を見る。





…近い。





整った顔が10p程の距離にある。





駄目だ意識してしまうと、体温と心拍数が急上昇してしまった。






絶対顔が赤くなってる。





急いで目をそらして片方の手で水の入ったグラスを持った。






とりあえず水を飲んで落ち着こう。






水を流し込むと少し体温が下がった気がした。









よし、とりあえず起こそう。






チラッと様子を伺うと、寝ていたはずの先輩とばっちり目があった。






っ…


みるみる顔が熱くなる。







「…ほしい。」




えっ?なに?




カカシ先輩は酔っているのかいつもと違う色っぽい声で囁いた。





すると急に手首をつかまれ、どんどん顔が近づいてくる。



えっ?な、なに?


私の頭の中は混乱して真っ白になっていた。















「みず…」











「…」










カカシ先輩は私の握ったグラスを自分の方へと寄せ、そのままの状態で水を飲み始める。







ゴクッと喉がなり満足したのかグラスを離す。


そして体も離れていった。






「あ〜…寝ちゃってたみたい。ごめんね。」




先輩は申し訳なさそうに眉根を下げていた。











あ、あーそうだよね。



私ものすごく恥ずかしい勘違いをしてしまった。



顔から火が出そう。




「だ、大丈夫です。」




そう答えるのに精一杯ですぐに顔を逸らした。







「あれ、もしかして怒ってる?」




カカシ先輩は顔を覗き込もうとしてくる。



私は今の顔を見られたくなくて手で顔を覆いながら、「怒ってないです。」と強めに答えた。






「そう?」




カカシ先輩はあっさりと引き下がると店内の壁掛け時計を見た。






「もうこんな時間か〜そろそろ帰りますか。」





私はどうにか落ち着いてお会計しましょうと鞄から財布を出して準備した。



するとカカシ先輩は涼しい顔で、もう終わってるから、と立ち上がる。



「え?私も払います。」




いつの間にお会計を終わらせていたのか、今日は驚かされてばかりだ。





「いいんだよ。可愛い後輩のためだからね。こんな時はかっこつけさせてよ。」



日頃見せないような優しい表情で頭をポンポンとされた。







反則だよ…カカシ先輩かっこよすぎ。



これで何人もの女性を虜にしてきたんだろうな。




何だか複雑な気分…














店を出ると時間も時間なので人通りはまばらで、先輩は危ないからと家まで送ってくれた。





「今日はありがとうございました。」





「こちらこそ。疲れてるだろうからゆっくり休んでね。それじゃ、おやすみ。」



右手を上げながら背を向ける。








するとカカシ先輩は、あ!と振り返り。






「俺以外の奴には油断しないでね。じゃないとキスされちゃうかもしれないよ。」






と言い残すと風の様にサッと消えていった。


















カカシ先輩が去った跡をポカンと見ながら、今言われた言葉を考え直してみる。







待って、どういうこと?



もしかしてわざと…




「寝たふり?」






ということは私の表情を見ていて…






ボンっと煙が上がりそうな程の赤面。




恥ずかしすぎる。








ななしはその場にしゃがみこんだ。
















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