「敬愛の先」

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ななしが目を覚まさないまま一週間が過ぎた。






現世でのこともあり瀞霊廷内はどの隊もバタバタと忙しく殺伐としている。





例外なく俺の隊もいつもに増して残業が続いていた。





三席の穴はでかい。





随分とななしに頼っていたのだなと痛感した。







卯ノ花の計らいで面会時間外でもななしの様子を見に行けることが幸いだ。








顔色も良くなって怪我の状態も良好だそうだ。







あとは意識が戻れば問題ない。

























































































 * * *







「報告は以上です。」





「わかった。下がっていい。」






扉が閉まるとふぅーと息を吐いた。






松本が筆を持ったままボーっとしているのが視界に入る。







「…もう一週間になりますね。」







俺の視線に気付いたのか気付いてないのか態勢を変えずに口を開く。










「…あぁ。」










お互いそれ以上言葉を発することはない。





外を眺めると快晴。




もうすぐ十二月ともなれば一気に気温も下がり執務室の窓も結露していた。








代わり映えもなく淡々と一日が終わった。
























今日も二十三時を回った頃、ななしの病室を訪れた。










相変わらず規則正しい寝息が聞こえるだけで瞼は頑なに閉じれれている。









机の横に置かれた丸椅子をベッドの横へ移動させると、いつものように腰掛けて手を握った。
















二人で夜道を帰った日。







俺が檜佐木と似合いだと言った時、何故か酷く傷ついた顔をした。






その言葉にななしは何を思ったのか、傷ついた理由を考えた。







不安になって、自惚れて、どれだけ悩んでも人の心はわからない。






答えのない問題を永遠と考えている様な感覚に少し疲れた。







ただ一つわかったことはななしを俺の側に置いておきたいということ。







他の男には触れさせたくない。






自分の中にこんな感情が生まれるなんて思ってもみなかった。















早く目を覚ましてくれ。





またその穏やかな声で名前を呼んで。





いつもと変わらない笑顔を見せて。






































































































 * * *






ポカポカと右手が温かくて気持ちがいい。





夢の中で誰かが私を呼んでいる気がする。





まだ寝ていたいけどそろそろ起きなきゃ遅刻しちゃうな。










白く淡い光が視界に入り込み、つい眩しくてギュッと目を瞑りもう一度ゆっくり目を開いた。






ここどこ?




見慣れない天井。




私の部屋じゃない。







少し開いたカーテンから曇った窓が見え、夜が明けたばかりなのか垂れた水滴に陽が当たりキラキラと輝いている。






右手に重みを感じて顔を向けると、白銀の髪が窓から差し込む光で照らし出されている。









「日番谷…隊長?」






ピクリと握られていた手に力が入ったかと思うと、隊長はゆっくりと体を起こした。











「…おはよう、ななし。」






少し間があって発せられた優しい声と今まで見たことない様な柔らかい表情に自然と顔が綻ぶ。







「おはようございます。」














記憶が混濁していた為、色々状況を説明してもらった。








一週間意識を失っていた事。





他の皆も無事に生きているという事。






特殊な虚はあれから出現していない事。








丁寧に教えてくれた。








「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」






「生きていてくれたならそれでいい。」






よく見ると疲れた顔をしている。






忙しい中様子を見に来てくれてたんだろうな。






「早く退院して挽回しますね。」






隊長はふっと笑うと立ち上がり椅子を机の横へ置き、ベッドの側で私の顔を見つめる。












「…目を覚ましてくれて良かった。」






優しい眼差しにドキッと鼓動が高鳴った。







「卯ノ花を呼んだからしっかり診てもらえよ。」





「はい。」






私の返事を聞くと背を向けて扉へ向かって行く。







「日番谷隊長!」






隊長は足を止めて、どうした?っと振り返った。






「ありがとうございます。」






「…あぁ。」






隊長は軽く手を上げると部屋から出て行った。


























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