「敬愛の先」

□05
1ページ/2ページ











飲み会日の当日。




朝から楽しみで落ち着かない。






私はそわそわしながら定時でキッチリと仕事を終わらせた。





集合時間は19時。



まだ2時間程余裕がある。




一度帰ってゆっくりしとこうかな〜とのんびりしていると、松本副隊長に行くわよと手を引かれた。





「え?まだ時間早いですよ?」





「なに言ってんの、終わったんなら飲んで待ってましょ。」






副隊長は返事も聞かずに部屋を出ようとする。





「ま、まだ隊長に挨拶してないです!」





焦って背中に声をかけるとピタッと副隊長の動きが止まりその場から、隊長もちゃんと来てくださいよ〜とだけ言うと再びぐいぐいと手を引かれる。





私は仕方なく首だけ振り返って、先に行ってますと言って部屋を出た。
































ちょうどいい時間もあってか呑み屋街はたくさんの人で賑わっていた。






約束しているお店の近くにある居酒屋へ入ると、副隊長は早速お酒を頼みメニューを眺めだす。






そのスピーディーさに呆気に取られていると先程までメニューを見ていた松本副隊長と目が合った。





艶のある髪に色っぽい唇。





オレンジの照明の効果もありいつもと違う色気のある姿に女の私でもドキッとする。





私もこんな風になれたたらなと、つい考えてしまった。






「名無しさんと2人で呑んでみたかったのよ。」





微笑む顔は優しくてじわじわと嬉しさが込み上げる。





「ありがとうございます。誘ってくださって嬉しいです。」









後のことも考えて軽くつまめる物だけを頼みゆっくりと飲み進めた。









「ところで、名無しさんは修兵のことどう思う?」





他愛もない話題で盛り上がっていたところでの急な質問に目をパチパチさせてしまった。






「どう思うと言われましても…」






檜佐木副隊長と直接的な絡みは数える程しかない。





なぜか興味津々というような顔で答えを待っているようなので返答を捻り出す。






「多彩な方ですかね。」





「…それだけ?」






うーん…困ったなと更に考える。





「じゃあ隊長のことは?」





「た、隊長ですか?えっと…」





予想外の人物にしどろもどろになりながら話す。





「強くて仕事ができて優しくて、尊敬しています。」






それを聞くと副隊長は少し肩を落として、今後に期待ねと質問の意図を聞く前に話を終わらせてしまった。
















お店を出て集合場所へ向かうとすでに雛森副隊長と檜佐木副隊長が待っていた。






「お疲れ様です。」





私は2人に声をかける。






「あ、名無しさんちゃん乱菊さんお疲れさま!」






雛森副隊長はぱぁーと明るい笑顔で出迎えてくれた。






「あんたたち早いわねー」





「さっき来たとこっすよ。」






檜佐木副隊長は続けて





「吉良は遅れるみたいっす。日番谷隊長もまだ来てないみたいだ。」





と教えてくれた。





「じゃあもう入っときましょうよ。」





松本副隊長の言葉に2人も同意して先に入店する事になった。









テーブル席に案内されるととりあえず下座に座る。





隣に檜佐木副隊長で前に松本副隊長、そして斜め向かいに雛森副隊長が座った。





全員そろっていないが時間も過ぎているのでとりあえず乾杯して始める事になった。





隊長がきてないけど良いのかなと思いながらも3人に合わせる。








「シロちゃん来ない気かな?」





今私も雛森副隊長と同じ事を考えていた。





「大丈夫よ、来るように念押ししといたから。」






その言葉と同時に店の扉がガラガラと音を立てて開いた。







「あ!シロちゃんこっちこっち。」




立って手を上げる雛森副隊長に気づき、こちらへ歩いてくる日番谷隊長。





来るなり仏頂面でシロちゃん言うなと怒ると、遅れてすまないと言って雛森副隊長の隣の席に座った。








すぐに松本副隊長がメニュー表を渡して飲み物を注文し、全員に飲み物が行き渡ったところで改めて乾杯をした。





私は運ばれてきた料理を取り分けながら、隊長はお酒飲まないのかなと烏龍茶を飲んでいる姿を盗み見る。






いつもと違って柔らかい雰囲気。






雛森副隊長がいるからかな?






二人は何か話しているみたいだけど内容は聞こえない。





楽しそう…何を話してるんだろう。





ここ最近隊長の事ばかり気になって意識している自分が気持ち悪い。







考えないよう料理へ視線を戻し取り分けていたサラダに集中する。






「なんか苦手な食べもんあるか?」




トマトを箸で摘まんだタイミングで檜佐木副隊長から声をかけられた。






「私は大丈夫です。」




あぁ、隊長の事ばかり考えていたせいで気遣いを怠っていたと反省する。





「檜佐木副隊長は苦手なものありますか?」





遅れて確認すると、檜佐木副隊長の目線が船盛へ移り私もその視線を追う。





「俺はウニ駄目なんだよな。」




綺麗に並んだお刺身の側にウニが豪華に盛られている。





「そうなんですか、意外です。」





お酒を飲む人は好きそうなのにと思いながら彼を見ると、バツが悪そうに頬を掻いた。








「あの…他の方は苦手な食べ物があったりするんですかね?」






周りに聞こえないように、耳元に口を寄せて聞いてみる。







檜佐木副隊長は頬を緩めると快く教えてくれた。






「乱菊さんは筍、雛森はすもも、日番谷隊長と吉良は干し柿かな。まぁ今日はそんな食材出ないだろうけど。」







余りにもスラスラと答えてくれたので驚いていると、察したように瀞霊廷通信で特集を組んだことがあると教えてくれた。






それにしても記憶力がいいなと感心の眼差しを向け、これからも必要となるだろう知識を頭に記憶した。







「そういえばハロウィン特集のお礼を言ってなかったな。大反響だったよありがとな。」





嬉しそうに笑う姿にこちらまで嬉しくなって笑みが零れた。









「それに…」





それに?






急に歯切れが悪くなり首を傾げる。







顔を赤くした檜佐木副隊長は少し躊躇して他に聞こえないよう耳打ちする。





「…すごく綺麗だった。」





耳に吐息がかかる程の距離と囁くような声がくすぐったい。





みるみる顔に熱が集まってくるのがわかる。





私ドキドキしてる?





距離を戻した檜佐木副隊長は私の様子に満足そうに微笑む。









「ちょっと修兵、こそこそしてないで私たちにもお礼言いなさいよ。」





お酒がまわってきて気分が良くなってきたのか大きな声で松本副隊長が話に入ってくる。









良かった…




ナイスなタイミングで松本副隊長が入ってきてくれたお陰で、徐々に鼓動が落ち着いてきた。





檜佐木副隊長が女性から人気な理由がわかった気がする。












「乱菊さんも雛森も協力してくれて助かった、ありがとう。」





「それなりに楽しかったわ。次はどうするの?」





クリスマス特集?と松本はお酒を呷る。





「そうしようかと思ってます。」






でもまだ内容は決めてなくて…と檜佐木は言葉を濁した。







「それなら私に任せなさい!」





いい企画考えてあげるわよ、と自信満々で言い切る。






「いいんっすか!」







檜佐木の顔も満更ではなさそうだ。








また巻き込まれそうだなと思いながら盛り上がる二人に苦笑した。


















.
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ