短編

□マルベリー
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悟の匂いがする。




温かい。




夢だ。






とっても幸せな気分。






未練たらたらな私は本当に無様だ。






今度悟に会ったらお別れしよう。





ちゃんと言えるかな?






サヨナラってちゃんと言うから今はもう少し夢の中に居たい。











思いも虚しくどんどん意識が浮上していった。










目を開いた時には外は真っ暗で、泣きすぎて頭がガンガンする。





水を飲もうと体を動かしたところで腰に重みがあることに気づいた。





振り返ると目を瞑っていても分かる整った綺麗な悟の顔が目の前にあった。










「…なんで?」





「それは俺が聞きたい。」





寝てなんていなかった。




伏せられた白い睫毛が動くとアクアブルーの透き通るような瞳に見つめられる。





私は悟の胸を目一杯押して抱かれていた腕が離れるとベッドから立ち上がった。









「…出てってよ。」





「は?」





「もう別れよ…」





「自分が言ってること分かってんの?」





「わかってる。」





冷静だが怒っていることは声色ですぐに読み取れた。





目が腫れぼったい。




きっと今すごい顔なんだろうな。





「終わりにしたいの。お願いだから出てって…」





私は冷たく言い放つと悟を見ていられなくて俯いた。











「お前な、言い加減にしろよ!」





急な怒声に体がピクリと反応する。




「何で別れを切り出してるお前が泣いてんだよ。」





指摘されて初めて泣いていることに気づいた。





「何で…隠れて泣いてんだよ!」




気圧されて何も言葉がでない。
















「…別れたいなら理由を言え。」





怯えている私に気づいたのか悟は声を和らげた。





「…うわき…してるでしょ。」





目を見開き黙り込む悟。





「私よりも大切な人ができたなら、言ってくれればっ」





言葉の途中で唇を塞がれた。




無理矢理にねじ込まれた舌が絡みつく。






「んんっ…」





深い荒々しい口づけは徐々に私の意識をうばっていった。




口の端からどちらのものかわからない唾液が垂れる。




苦し…




悟の胸をトントンと力なく叩くと、やっと離れてくれた。






お互いの息遣いだけが静かな部屋に響く。













「俺が浮気なんてするわけないだろ!」




「はっはぁ、だって見たんだもん!画面に恵って!」





「…え?」





悟はこの場に似つかわしくない間の抜けた声を発した。





「今なんて?」





「だから、恵って女の人から…」







「っぷ、あはは。」






「何で笑ってんのよ!」






「ななし、恵は男だよ。」






思考が停止した。







「因みに言っとくとまだ小学生だしね。」









サーっと血の気が引いていくのが分かる。






あれだけ溢れ出ていた涙もピタリと止まった。






どうしよう、とんでもない思い違いをしてしまったようだ。







「…私の勘違い?」






「そ、ななしの勘違い。」






ゆっくりと視線を手元に落とした。




悟から漏れ出すオーラが怖すぎて顔を上げられない、否、上げたくない。







「さて、どうしようか?」





声を聞いただけで何故か体が震えた。







「俺すごく傷ついたんだけど、どう責任取ってくれるの?」






悟は私の顎に手を添えるとグイッと持ち上げ怪しい笑みを浮かべている。





思わず目だけを動かし視線を逸らした。




「目逸らすなよ。」




あまりの圧に逆らえず言われた通りに視線を戻す。






こんな息の詰まるような怒った悟は初めてだ。








「お仕置きしないとね。」






言い終わらない内に急にふわりと体が浮いて視界がぐらりと傾きベッドに下ろされた。






「俺がどれだけななしの事を愛してるのか、しっかりと教えてあげる。」






悟は制服のボタンを片手で器用に外していく。







「ちょ、ちょっと待って!謝るから!」







「謝って許されるなら警察いらないよね?」






悟の手は止まることなく次々と服を剥ぎ取られ遂に下着とスカートだけになった。






「止めてって泣き叫んでも止めてあげないから。覚悟しなよ。」










その後なす術もなく私は悟の気のすむまで抱かれ続けた。













そして翌朝、私は体中が痛くて午後まで立ちあがれずやむなく任務をドタキャンした。





もちろん夜蛾先生に𠮟られて、悟はその様子を端からニコニコと眺めていた。





















俺は独占欲が強いんだ。






自分でも狂ってるって理解してる。






だからななしが俺と別れるのなら俺はななしを殺すよ。






そして俺も一緒に死ぬ。







本当に狂ってるよね。






でも俺がこうなったのはななしのせいなんだよ?







だからさ、責任取って死ぬまで一緒に生きよう。





































「マルベリー」花言葉は、彼女の全てが好き・ともに死のう。
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