シリーズ物テキスト
□流星雨(1)
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君が笑うたびに僕に降り注ぐものは、
まるで 光の雨 みたいだ。
『 流 星 雨 』
なんて言ったのかはよく覚えてないんだけど。
オレの何気ない一言で、栄口がほんとに楽しそうに笑ってくれてさ。
最近はそうでもなくなってきたけど、栄口って気ぃ遣いで本心見せないようなとこあるからさ。オレそれがむちゃくちゃ嬉しくて、言っちゃったんだよね。
「栄口の笑顔っていいよね。オレ好きだな〜」って。
冗談めかして。でも、お前がそういう顔してくれんの嬉しいよって気持ちは込めて。
そりゃもちろん本心だったよ。
でも、軽い気持ちだったのも本当。
だって、どんなに仲いい友達同士だってさ、本気の「好き」はなかなか言えないよ、やっぱ。照れるじゃん。
その辺のことは、栄口なら分かってくれると思ったし、言わなくても分かるでしょ?って甘える気持ちもあったんだと思う。
・・・悔しいけどオレはまだ栄口のことをちゃんと分かってなかったんだ。
* * *
きっかけは、たった一言。
練習の後の帰り道、並んで歩いていた水谷が、別れ道を目前にして、「何かあっという間だなぁ」って呟いた。
いつものことなのに、本当に寂しそうだったもんだから、オレおかしくなっちゃってさ。つい吹き出しちゃったんだ。
そしたら、情けない顔してた水谷が、笑ったんだ。
あの、気の抜けるような笑顔で。
「栄口の笑顔っていいよね。オレ好きだな〜」って。
その瞬間、ぎくっとしたんだ。
どきっ、じゃなくて、ぎくっ。いつもと同じ、軽い口調だったけど、水谷が本気で言ってるんだって分かったから。
もちろん水谷はオレの気持ちなんて知らないし、それがオレと同じ「好き」じゃないことなんて百も承知してる。
それでも「好き」は「好き」。本当だったら嬉しいはずの言葉だったのに。
「あ、嫌われたくないな」って、唐突に思ったんだよね。
もちろん、それまでだって嫌われたかったわけじゃないけどさ。むしろその逆、なんて言えないけど。
なんていうか、改めて思ったんだよ。嫌われたくない、期待を裏切りたくないって。
そんで、水谷がオレに期待してるのは――。
笑顔が好きだなんて、こっちの台詞だよ。
水谷の笑顔は大事。オレの気持ちを軽くしてくれるから。
…それを壊すようなことは、したくないんだ。