シリーズ物テキスト

□流星雨(3)
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『流 星 雨(3)』





 どうしてこうなんだろう。


 大事なものを失いたくなくて、鍵を掛けてしまいこんでしまう。

 大事なのに。大事だから。それと向き合うことを恐れてしまう。


 触れることも眺めることも諦めて閉じ込めてしまう。



 鍵をなくしてから泣いても、遅いのに。






 これまで何度も繰り返してきた愚かな過ちを痛感しながら、栄口は川べりの道をふらふらと自転車を押して歩いていた。


 どれくらいの時間が経過したのだろう。太陽を失った空は、その名残を湛えた深い藍色に染まりつつあった。



「…水谷、怒ってた」



 違う、怒らせた。

 感情を露わにすることなどほとんどない水谷が、涙まで浮かべていた。


 栄口が距離を置こうとしていたことにも、ちゃんと気づいて、それでも待っていてくれたのに。

 その優しさに気づかなかった。
 ただ怯えるばかりで、水谷のことを見ることができなかった。向き合うのを恐れて、取り繕って遠ざけた。



 何よりも大事なのに。



 その代償が、これだ。もう水谷の友人でいることすら許されないのだろうか。



 湿気と熱気を含んだ空気が、ねっとりと肌に絡みつく。行き場を求める栄口の足をその場に引き留めるようだ。


 不快な暑さのはずなのに、背筋が寒い。



 それから逃れる場所を探して、栄口はただ懸命に足を動かしていた。





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