九龍小説
□ご当地グルメ。
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雪がしんしんと降り積もる。
踏みしめれば何かを押し付けたような音が響く。
息を吐けば白く、吸い込む空気は肺を凍らせてしまう程に冷たい。
ここがもしアルプスの麓や富士山のてっぺんならばそれも納得出来よう。
それでもここは。
東京・新宿。
天香学園・遺跡の一部分に過ぎない。
「寒っっ!!」
皆守は猫背気味な背中を更に縮め、寒さで歯が鳴らないように強くアロマパイプを噛み締めた。
その様子を見た九龍も、
「さすがにキツいな。」
と寒さに苦笑いを浮かべる。
執行委員であるトトを追いかけ入り込んだのは、雪と氷に覆われた区画だった。
「鎌治もそんな薄着で平気か?」
九龍はもう1人のバディである取手に話しかけると、大丈夫だよと意外にあっさりした返事が返ってきた。
「折角風呂入っても意味なかったな…。」
九龍は少し雑に乾かして来た髪に触れた。
毛先が凍っていた。
「なぁ、九ちゃんよ。どこかで休憩にしないか?」
「それもそうだなぁ。」
ぼやく皆守に答えながら、九龍が扉を開けるとその先は真っ暗だった。
暗視ゴーグルで様子を窺っていた彼が、嬉しそうに微笑む。
「すぐそこに魂の井戸があるから休憩にしよう。中は多分暖かいよ。」
先頭を歩く九龍に皆守はそうかとだけ答え、それに倣う。
取手も滑りやすい足場に注意しながら2人に続いた。