□色褪せない この刹那
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「こんばんは また来てくれたんですね」

「……暇だったからな」





目を合わせようとせず ぶっきらぼうにそう吐き捨てる

でもいつもの荒々しい口調ではなく

少し穏やかな感じの声色だったのは気のせいだろうか。





「そうですか 少しでも貴方の暇つぶしになるのなら良かった」

「…お前は俺に利用されて嬉しいのか?」

「いえ ただ貴方と過ごす時間はとても楽しいから」

「……変わった奴」

「そうですね…貴方も私も変わり者です」





それは皮肉なのか分からない言葉だった

ただ 暖かかった。
 




「それに 私はグリムジョーのこと好きですから」

「はっ…そりゃ残念なこった」

「どうしてです?」

「俺はテメェが大っ嫌いなんだよ」





キョトンとした表情で少女は動かなかった

泣き出すのかと思い 目を細めて暫く様子を見ていると 

少女はいつもの笑顔でニッコリと笑った。





「ありがとうございます」

「…あ?テメェ人の話きいてねぇのか?」

「聞いてますよ?グリムジョーは私のことが大嫌いなんでしょう?」

「……」

「それでいいんです」





柔らかく微笑む少女 それはどことなく儚げで切なげで 

とても美しいと思えた。





「例え好かれたとしても 私は貴方に何もしてあげられないもの」

「…はっ…意味分かんねぇ」

「あはは…グリムジョーには少し難しかったですか?」

「テメェ馬鹿にしてんのか?」

「そう思います?」





いつもなら少し機嫌を損ねることを言っただけで だけで何処かへ行ってしまうのに

今日は何故か帰らずに グリムジョーは窓辺に座っていました。


今まで殺風景だったこの窓辺は 少し鮮やかに彩られるようになりました。

それは 私にとってはとても嬉しいことだったのです。

この日 私は初めて貴方の笑顔を見たのです。






  色褪せない この刹那






全てが色づく

それが数秒間の光でも。















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「青白い頬に朱が差す」と同ヒロイン。

シリーズ化しそうなお話。







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