せかいせかい

□あいたいひと
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「どうしたフィンクス。随時機嫌が良さそうだな。」

「あぁ?ま、まぁな。」



フィンクスは顔を緩めると、照れくさそうに頭を掻いた



どこか浮かれた様子のフィンクスに、マスクをした男が鼻で笑う



「さきからニヤニヤ、気持ち悪いね」

「べ、別にニヤニヤなんてしてねぇよ!!」

「してるね」

「まぁまぁ、何かいい事でもあったの?」



金髪の少年の仲裁に、フィンクスは言いにくそうに視線を逸らしたが徐に口を開いた



「…………あ、あいつに似てる奴に会った」

「ふーん。それでそんなにデレデレしてんのかい。どうせ別人なんだろ?」



猫目を呆れたように細める女の刺を含んだ声に、フィンクスは眉を寄せる



「まぁ、そうなんだが…似すぎるくらい似ててよ。最初会った時は本人か―「偽物は偽物ね。」

ぐたらない事を言うな、とマスクをした男が冷たい声で遮った



「分かってる。けどよ…目の色まで同じだった」



その一言に部屋の空気が明らかに変わる


それまで興味がなさそうに話を聞き流していた、額に逆十字の刺青のある男の目も鋭く細められた



「それは本当か?フィンクス」

「見間違えとかじゃないよね?」

「違う。オレがあの色を間違えるわけがない。」



自信を持って答えるフィンの目に、戸惑いは一切ない


「本当に本人じゃなかったのか?」

「違った」

「そうか…ならば、あの目をもつ人間が他にも複数いるという事になるな」



逆十字は考えを巡らせるように、宙に視線を向けた



「オレもそう思って、その目の色は何かの一族か?って聞いたら、そうだと頷かれた」

「一族か…」

「…でも…前に言ってたよね。自分はこの世に家族はおろか同じ民族もいないって…」

「言ってたね…あの人が言うんだ…嘘じゃない。あの人はアタシ達にそんな嘘をつかない」



つくはずがない、と言い切る女に、その場にいた5人全員頷いた



「そうだな…だが、調べてみる価値はあるだろう。シャル、至急赤い目をもつ民族について調べろ。」

「了解」

「マチはここにいないメンバーに連絡だ。情報を掴み次第、すぐに行動に移せるようにな」

「分かった」



逆十字の男の指示に応えるためか、2人はすぐにその場から姿を消した



「やっと…お前の手がかりが掴めそうだ」



月明かりの下、
逆十字の男の目が怪しく光った


『あいたいひと』
貴女は何処にいますか?




 

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