MIX3

□ぜんぶが欲しいと言うのです
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厄介な人間に好かれてお前もかわいそうに。






→ぜんぶが欲しいと言うのです







衝動にかられたのは突然だった。

文字通り突然、前触れも何もねぇししいて言うならばついさっきまで何度も何度も魔物との戦闘を繰り広げていたって事で。
関係あんのかはさっぱりだが、命の危険に晒されると男って生き物は性欲が増加するんだとかなんだとか。
開けっ広げに言えば興奮して、涼しげな顔で押さえきれない爆発しそうな衝動そのままに隣いた身体を突き飛ばすように組み敷いた。

何事かと呆けている間に解き慣れたマフラーを抜き去って活発な両腕を縛ることで安易な抵抗手段を奪う。
反応が追い付いた頭で次に出るのは足だと簡単に予想はつくから後はそれを受け流しながらギラギラとした目で俺を睨むおっかない顔を見つめた。
とんでも無い程に獰猛な今にも喉元を食い千切ろうと響く言葉を飲み込んで、噛み付かれた舌のピリピリとした痛みに胸の奥が痒い。


「なあ、ラタ。」

「言いたいことがあんなら今の内に聞いてやる。」


随分座った目だ、気の弱い奴ならすぐさま逃げちまうだろう人を殺さんばかりの目だ。
さっさと放せと解放を訴えるというか命じるその言葉に従うはずもなく倒れた拍子に泥で汚れたその頬を拭う。
現れた柔肌に、一線の小さな傷を見つけた。


「後でいくらでも殴られてやる。」

「おい、」

「いくらだって甘やかしてやっから、な。」


前置きを、言い訳の如く続けるのはただの宣言だ。
一時停止も認めねぇ、少しの遠慮も配慮も交えない俺の言葉に殺気に彩られた瞳にもやっとした困惑の色が出る。
生い茂る大樹が陽を覆い隠す日陰の出来事、これから俺が起こすのはそう言った人目からは隠してしまいたい凶暴なことだ。


「少しだけ、付き合ってくれよ。」


選択肢なんてものは俺に組み倒された時点で既に消滅だ。
ひくりとひきつった小さな唇に噛み付いて、此処までなんとか持ちこたえた理性の鎖を引き千切った。










 
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