Under

□そんな貴方が愛しくて
1ページ/3ページ

俺は氷帝学園中2年、日吉若。


今は向日さんと二人で部室にいる。


何故かって?知りたいのか?


フッ・・・お前も悪趣味だな・・・
まあいい、教えてやる。









ーテニスコートー


「ふっ!・・・くっ!」


部活に来てすぐ跡部さんと打ち合うことになった俺は
今日こそ下剋上のチャンス!と思い、全力で打っていた。



「どうした?そんなものか?あ”ぁーん?」


そんな俺を尻目に、跡部さんは俺の打つ球なんてものともしていない。


くそ・・・いつになったらこの人に勝てるんだ・・・


悔しいが跡部さんは俺より遥かに強い。


分かっているが勝ちたい。



「くっ・・・!ハッ、ハッ・・・」


「フッ、息が荒いぞ?」


「う・・っ五月蠅いですよ・・・っ」


「ふん、素直じゃねぇな。もう止めだ。」


「なっ!俺はまだ打てます!打たせてください!」


「何言ってんだ!そんな汗だくになって息も荒くて
ぶっ倒れたりしたらどうすんだ!少しは自分の体を思いやれ!!」


「っ!・・・はい、分かりました。」


悔しい。自分のことを一番分かっているのは自分だと
当たり前のように思っていたのに
この人は俺の事を俺以上によく分かっている。


部員のことをよく理解しようと努力している、そう思った。


多分俺が跡部さんに勝てないのは実力の他にも色々とある。


跡部さんにあって俺にはない部分・・・


素直になると言うことか?


いや、でも跡部さんも素直じゃない所がある。


・・・ハァ、もうこういう事を考えるのはやめよう。疲れる。


その時、隣のコートから俺を見ている人がいることに気が付いた。


赤い髪、白い肌、細い体、それでもって小柄な身なり。一瞬女と見間違えてしまいそうだ。


向日さんだ。それ以外ありえない。


あ、向日さんを見た瞬間、目を逸らされてしまった。可愛い事を。



「ほら!宍戸!早く続きやろうぜ!」



俺のことを見ていたという事を誤魔化すつもりなのだろうか、宍戸さんと打ち合いを始めてしまった。
ああ、本当に可愛い。






そうこうしている間に辺りはもう真っ暗に。


残って打っていくつもりだったが疲労と時間の問題もあり、俺は一人で部室で着替えていた。



ーガチャッー

急にドアが開き、誰かと思い見てみると
そこに居たのは向日さんだった。



あまりの事に驚き、立ち止まっていると
向日さんが沈黙を破った。



「日吉ぃ!一緒に帰ろうぜ!」



眩しいくらいの笑顔でそう言われては断れるわけがない。


顔が緩みそうになるのを押さえ

「しょうがないですね、一緒に帰ってあげます」


俺はその一言を言った。
我ながら自分は素直じゃないな、と思う。



「へっ!本当は一緒に帰る奴居なくて寂しかったんだろ?!感謝しろよなぁ!」



まったくこの人は・・・。

まあいい、帰るか。





帰宅途中、俺は向日さんから一方的に話し掛けられ続け、俺はそれにただ相槌をうつだけなどと愛想の無い事をしてしまった。

本当に俺はどうして素直になれないんだろう・・・


本当はこんなにも貴方の事が好きなのに。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ