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□壁
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僕の夢は、

体術しか使えなくても
立派な忍になれるという事を

証明する事。


それと、


ネジを越える事。


今まで彼には
何度も勝負を挑みましたが、

まだ

一度も勝てた事はありません。


でも、

一度だけ


彼との勝負で
引き分けになった事があります。



あれは

僕達がまだ
下忍だった頃の話。



僕はいつものように
ネジに勝負を挑みました。


でもネジは
いつものように

「やめておけ」

そう言って
相手にしてはくれなかった。


しかし、
そこで諦める僕ではありません。


その後もしつこく頼んだら

渋々勝負をのんでくれました。


丁度
任務明けで

僕はとても調子が良くて


今日はネジに勝てるような


そんな根拠のない思いが
僕を動かしていました。


こんな時は
周りが見えなくなってしまう。


この日も
そうでした。


テンテンに審判を頼んで、

僕達は
勝負を始めました。


初めは僕が優勢だったけれど、

ネジは僕の死角を次々と狙ってくるので


いつものパターンで

段々と
僕の方が不利になってくる。


でも、


僕は
ある事に気が付いた。


いつものようにやっているけれど



何か違う



僕にも少し
力が付いたという事だろうか―――


初めは

そう思っていたけれど、


それは
僕の勝手な思い込みに過ぎなかった。



「ネジ!大丈夫!?」


僕の蹴りが当たる前に
ネジが倒れました。



「…負けだ」


「えっ?でも今のは…、」


「お前の勝ちだ、リー」


僕の蹴りは
当たってはいないのに


テンテンの判定を無視して
ネジは僕の勝ちだと言う。


「試合放棄ですか」


僕がそう言っても、


「今日はもう…終わりにしよう」

そう言って

彼は演習場を出て行きました。



足元を見ると

木の根が
地面を這っていて、


僕は

もしや、と
思ったんです。


こんな事は初めてで


後に残された僕とテンテンは

しばらく顔を見合わせる事しかできませんでした。





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