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□終雨
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この手を離したら、もう戻れない。


もう、

戻る事は許されない。



地面にはまだ新しい血の跡が残る。

「粗方倒したか…」

敵地は目前。

だが、敵の守りも堅い。

ネジとテンテンは、
一向にそこに辿り着けずにいた。

別行動をとっていたガイとリーとも

交信が途絶えた。


「ネジ、アンタ…!」

戦闘で負った傷から
紅い血が流れる。

敵を倒したといえ
ここは敵地同然。
いつ新手が来るかもしれない。


「…行け」


「え…?」


時間が止まった。

そんな気がした。



応急処置をしていたテンテンの手が

小さく震える。


「まだ敵はいる。
俺が時間を稼ぐ間にガイ達と合流しろ」


「…何、言ってるの…?」



分かっていた。


自分の力では
この傷は治せない。



止まらない血が、
彼女の白い服に紅くシミを作る。


「まだチャクラはある。
心配するな。必ず追い付く」


そう言いながら
ゆっくりと立ち上がる。


「…近いぞ」

ネジは既に白眼を発動させ、
戦闘態勢に入ろうとしている。


雲行きが怪しい。

遠くで鳴る雷が、
ビリビリと肌に伝わる。



自分の支えがなければ
立つ事もままならないほどなのに。


この手を離したら

もう戻れない。


「…約束…破ったら許さないから」


「あぁ」



互いの手が
微かに触れて

すぐに離れた



今まであった
二つの時間を


――存在を――


掻き消すかのように


激しい雨が降り始めた。





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