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□始まりの朝に
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「偶然ですね」


四月―――
昇降口に貼り出される新しいクラス。

小さな高校だけど
三年間同じクラスになれる確立は低い。


「早いわね、リー」

「朝練があって。
ついでに見てきたんです」

「大変ねー。さすが空手部」


リーの所属している空手部は、
全国でもその名を轟かせるほどの実力を持っている。


そして、


「ネジも同じクラスよ」

もう一人。
空手部部長の日向ネジも、私達とは三年間同じクラス。


「…みたいですね」

リーは空手部副部長。
後輩からの信頼も厚くて、実力もある。

空手の事はよく分からないけれど、同じ武術をやっている者からして見ても
彼の成長には目を見張るものがある。

でも

実力の差がものを言うこの世界では
リーの力は、ネジには届かなかったらしい。


誰が言い出したのか、
二人はお互いをライバル視しているとか。



「リー、先生が探してたぞ」


「あ、すみません」


ウワサをすればなんとやら
部長さんのお出まし。

手には
部活の練習予定表だろうか
プリントの束を片手に、リーに何か話している。


「すみませんテンテン。
呼び出し食らっちゃいました」

そう言ってリーは私の方へ向き直って、
申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「ドンマイ。じゃあまた教室で」

「はい」

「ネジも。またあとでね」

「あぁ」



確か今日は、先生達が出張とかで、どこの部活も休みだったはず。

久しぶりに二人を誘ってお昼でも食べに行こうか。
駅前に、美味しいパン屋さんができたって噂を聞いた。




にわかに
校舎が活気を帯びてきた。

時計を見れば、始業のチャイムまであと十分ほど。

昇降口は、新しい出会いによって生まれた嬉々とした声で溢れかえる。


「…断られちゃうかな」


朝日の差し込む廊下を歩きながら

喜びを、一人かみしめる。





→あとがき
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