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□心の鍵
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「手伝う」
暮れ欠けた夕日の中、小さくそう言葉にしたネジは黙って武器を拾い出した。
その光景を見て驚いているテンテンは呆然と固まっている。
「早くしないと見つからなくなるぞ」
「うっ、うん」
我に返り、慌てて拾い始めた。その後二人は言葉を交わす事はなく、辺りが暗くなる前に全部の武器を拾う事が出来た。
「これで全部か?」
「ありがと」
テンテンはネジから武器を受け取ると巻物にしまう。
「送ろう」
修業場は森の奥で街灯などはなく、月明りが道を照らしているだけだった。
「なんか、調子が狂うわ」
帰り道、無言で歩くネジの隣でテンテンがぽつりと呟いた。
ネジとテンテンは修業の後にこうやって帰る事など今迄一度もなかった。
ネジが修業の後に武器の回収を手伝う事など無かったからだ。
それはもう当たり前になっていて、別段気にする事でもなかった。なので、今日のネジの行動はテンテンにとって理解に苦しむ行動だった。
「体調でも悪いの?」
「何故だ?」
「だって、ネジが優しいのって初めてなんだもん。なんか、気持ち悪いわ」
「っ!!」
テンテンは思っている事を正直に言葉にした。
多少言葉が悪いのはそれまでのネジの行動とは明らかに違っている事を物語っていて、ネジは今迄自分がどう思われていたのかを実感した。
「お前は、中忍試験での傷はもういいのか?」
少し居心地が悪くなったネジは話をかえた。
「うえっ、嫌な事思い出させないで。大丈夫、大した事なかったから。・・・ネジは?」
「問題ない」
「そう」
中忍試験は二人にとって忘れる事のできないものとなった。
二人は見事に負けた。
テンテンは医務室に運ばれベッドの上で目が覚めた時、悔しくて泣いた。そして強くなる事を心に誓った。
ネジにしてみれば父親の真実を知り、長い間抱えていた憎しみは和らいでいた。少しずつだが、周りに目を向ける事をするようにもなり、一族への想いも変化を見せた。
テンテンはこれまで聞く事が出来ずにいた。
【呪印】
それがネジを縛り、苦しめているのだと云う事は理解していた。
しかし深い理由などテンテンには分かる筈などなかった。
ネジは自分から話はしないし、聞いても答えてくれる程自分達がお互いに信頼しているかと言えば疑問だっだ。
自分達の間に【仲間】と云う文字さえ見えなくなっていた時期もある。
テンテンはその事で傷付いた時もあった。
その事でテンテンの気持ちが変わる事はなかったが、ネジが厚く重たい扉に自分の心を閉じ込めていて、上辺だけの繋がりなのだと思い知らされている事が淋しくて堪らなかった。
ネジは自分自身にさえ興味がないのではないかと思う時がある。
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