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□ありがとうこれからもよろしく
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「二人ともグラス持った?」
「バッチリ持ってます!」
「あぁ」
「じゃあいくわよ。せーの」
「乾杯!」
「かんぱーい」
「…」



カチャン、カチャンと各々のグラスがぶつかり合い涼しげな音を響かせた。ご飯やらお菓子やらが並んだちゃぶ台を囲んで三人乾杯。ごくごくとジュースを流し込み渇いた喉を潤す。

今日はリーの家でリーと私の中忍昇格祝いだ。



「ガイ先生は何時に来れるの?何か先にはじめちゃったけどいいかな?」
「昼過ぎには着くと言っていたんですが」
「先に始めてろと言っていたしいいんじゃないか?」
「そうね!よーし、じゃあもう先に食べちゃおっと。見て見て。美味しいって評判のシュウマイ買ってきたの」
「美味しそうですね!」
「食べよ食べよ。二人ともお皿ちゃんとある?」
「あります!」
「ネジほら醤油」
「あぁすまない」


ほいほいとテーブルの上で調味料や皿やらが回っていく。案外こういうときにもチームワークとかって出てくるのかもしれない。相手が今何欲しいとか何考えてるかとか二人のことならすぐ分かるし多分二人も私が何考えてるか手に取るように分かると思う。その証拠に醤油をお皿に注いだと同時にネジからカラシが回ってきて三人同時に手を合わせていただきますが出来た。


「美味しいですこのシュウマイ」
「でっしょー?今評判してるから並んだんだー。あ、ネジその餃子はどう?」
「あぁ美味い」
「言ったわね!リー聞いた?今ネジ美味しいって言ったわよね」
「?はい。確かに」
「何なんだ?これも評判なのか?」
「ふっふーん。実はその餃子、私のお手製」
「ぶっ」
「何吹き出してんのよネジぶん殴るわよ」
「本当にテンテンが作ったんですか…?」
「そうよ。今回はうまくいったの。まあヒナタに作り方とか聞いて言われたそのまんまの材料と手順で作っただけなんだけど」
「あぁなるほどな」
「どうりで…」
「ほんっと失礼だからねあんた達」


喋りながら食を進めていくとあっという間に食べ終わってしまった。やっぱりシュウマイがMVPだったわね。また買ってこよう。


「お腹いっぱーい」
「沢山食べましたね」
「味が濃い…」
「ネジってばおじさんくさい」
「…」


三人で一服していると窓から爽やかな風が入ってきて部屋を駆け抜けた。ああなんていうか幸せかも。


「ねえリー」
「何ですかテンテン」
「私達中忍にったわけじゃない?」
「はい!テンテンは立派に試練を乗り越えていましたよ!中忍試験見事でした。ネジにも見せたかったくらいです」
「ほう。それは見たかったな」
「ありがと。リーもなかなかだったわよ。みんな驚いてたし。ただ無茶して突っ込んで怪我し過ぎなのは前と全然変わらないけど」
「あはは気を付けます」
「でさあ、これは私達の昇格お祝いパーティーなわけでしょ?」
「?はい」
「ここらでひとつお祝いの言葉でも聞きたくない?」
「お祝いの言葉…ですか?」
「…」
「そう。例えば、ここにいるチームメートの日向ネジ君からとか」
「…そうきたか」
「いいですね!是非聞きたいです!ネジ、お願いします」
「お願いしまーす」
「お前ら…」


マイクの代わりに中身が微妙に入ったペットボトルをネジにインタビューみたいに向ける。眉間に思いっきり皺を寄せて、これはネジの困ったときの表情だ。困ってる困ってるとリーと顔を見合わせて笑った。


「はーやーくー」
「ネジ、お願いします」
「……良かったな」
「…」
「…」
「それだけ!?」
「量より質だろ」
「異議あり。量も質も両方要求しまーす」
「ネジ感動するような言葉を何かお願いします!」
「あはは、感動できるような言葉お願いします」
「…」


他意のないリーの要求でますますハードルが上がり比例して難しそうな顔をするネジが面白くてまた笑った。思えばずっとこの三人でやってきたんだなぁ。いつも危険な場所で一番近くにいて…お互いのことが手に取るように分かるってよく考えたら出来て当然なのかも。だってお互いを知らなかったら命に関わるんだもの。チームワークを取るってことは相手を信じて命を預けるってことと一緒だし。そう考えるとネジもリーも私を信頼して命を預けてくれてるってことよね。オーバーかもしれないけどそれってちょっと凄いかも。ネジにマイクを向けていることも忘れ勝手にそんなことをぼうっと考えているとそんな私を知ってか知らずかネジが口を開いた。


「これは始めて言うことなんだが…」
「なに?」
「実はお前らの本戦、俺も見に行っていた」
「え」
「でもネジは当日特別任務で里出てたんじゃ…」
「早めに終わってその後行った」
「じゃあ私達の試合見てたの?」
「あぁ」
「言ってくれればよかったのに。何で秘密にしてたの?」
「そうですよネジみずくさいです。言ってくれればお茶の一杯でも出したものを」
「いやあんたんちに遊びに来たんじゃないんだから…」
「言う必要性を感じなかったからだ」
「必要性?」


?訳が分からないと二人で首を傾げる。ネジは時々言葉が難しくて何を言わんとしているのか察しづらいときがある。その度私達はこうして頭を傾け悩ませるのだけど。そんな私達を見てふとネジが笑ったのでますます分からなくなったところで漸くネジが口を開いた。


「試合を見てこれなら受かると思ったから敢えて何か言葉をかけようとも思わなかったさ言う必要も感じなかった」
「…!」
「ネジ…」


隣から、うっと涙を堪える声がしてリーが感動していると分かった。こうしてネジとリーが分かり合う日が来るなんて前までは思いもしなかった。


「ネジもたまにはいいこと言うじゃない」
「たまにはは余計だ」
「さてと……あれ」
「?どうした」
「どうかしましたか?テンテン」
「私達普通にご飯全部食べきっちゃったけどさ」
「はい」
「?」
「ガイ先生…来るんだよね?」
「…あ」
「…」


僕としたことがあああと頭を抱えて苦悩するリーとすっかり忘れてたやっちまった顔のネジ。


「あ、そうだ」
「なんだ?」
「ネージ」
「…なんだ」
「ガイ先生のご飯とあとついでに食後のデザートかなんか買ってきて」
「…何で俺なんだ」
「今日は私とリーのお祝いだしー。ね?リー」
「助かりますネジ!ガイ先生にも満足していただけるようなご飯を買ってきてください!」
「お前ら…」
「お願いします日向上忍ー。可愛い後輩のために」
「っ…」


私とリーに迫られて結局財布を持って靴を履くネジ。まったく。なんだかんだ優しいのよね。


「よろしくねーネジー」
「頼みました!僕はテンテンと二人でゆっくりしてます」
「…後で覚えてろよ。リー」
「あはは」


バタン


「何でリーだけ覚えてろよなの?」
「あはは後で睨まれてしまいます」
「だからなんでよ?」
「ネジに怒られるから内緒ですよ」
「なにそれー」


二人で秘密とか嫌なかんじ。と睨んでやった。気になるけどまあなんでもいっか。…それより、


「作戦通りねリー!」
「はい!やりました」
「ネジってば案外騙されやすいわねー」
「僕がガイ先生を忘れるわけありませんよ」
「ほらほら、じゃあガイ先生とネジが戻ってくる前に早く準備しなきゃ」
「ラジャ!僕はケーキ出してきます!」
「じゃあクラッカー準備しとく!」


今日は私とリーの中忍昇格祝い。だけど同時に見守ってくれた上忍二人に感謝を伝える日。そう二人で決めて用意しておいたケーキ、クラッカー、そしてめいっぱいの感謝を込めて。


「そろそろ来るかな。リー、窓から見えない?」
「あ、ガイ先生とネジ二人一緒に戻ってきましたよ!」
「丁度いいわね。よーし、ドアが開いたと同時にクラッカー鳴らすわよ」
「はい!」


足音が向かってくるのが聞こえて私達はクラッカーを構えた。最高の笑顔で迎えよう。きっと二人ともびっくりする。みんなひとつずつ成長していってそれぞれの道を歩き始めてもきっと私達は


「来ますよテンテン」
「オーケー」


きっといつまでも最高のチームでいられる。

ガチャリとドアが開いた。




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