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□カーテンコール
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夏休みはそれはそれは忙しいものになった。
部活もやりながら映画作成に時間を割き、夏休みのイベントにもしっかり参加。ガイ先生ではないが、それなりに充実した青春期だったと思う。

当初のロミオにガイ先生、ジュリエットにネジというキャスティングを入れ替えたこと以外は大きな変更もなく(ネジのドレス姿が予想以上に似合ってしまったため、彼の今後を考えて急遽ガイ先生に女装させて笑いを取る方向に変更したのだ)、楽しくスムーズに撮影は進んだ。

夏休みの中頃から9月中旬に撮影を行い、文化祭本番直前までに編集を終わらせるスケジュール。

だったのだが。


「ダメですか?」
「だ、ダメに決まってるでしょ!?」
「そこをなんとか」
「無理だって!私が、」


もう夏休みも明けてしまった。
撮影は順調に進んだ。
やはりガイ先生は忙しく生徒と予定を合わせることは難しかったため、1週間合宿を組んだ内3日間を集中してガイ先生のシーンに当てたのだ。
撮影隊も万全、セリフもセットも何もかも万全だった。先生が食あたりになったこと以外は。


「テンテンも見たでしょ?あれじゃホラー映画になっちゃう」


助監督兼脚本の演劇部の女の子は、半ば泣きながら彼女に訴えた。
確かに撮影した映像の中の先生は、劇中の女の子達の誰よりも白い顔(寧ろ青い顔)でやつれた姿。「悲劇のヒロインで」という監督である自分の指示以上な演技で、鬼気迫る表情。
しかし出来上がった映像は、素人の撮影・衣装・セットなどと合わさるとさながらカムコーダ撮影されたホラー映像に近いものだった。

それはもう皆必死だった。先生も必死だった。いろいろな人から、「一生忘れられない思い出になるだろう」と言われ、なんとも言えない気分になった。


「私がヒロインなんて」
「テンテンはずっとプロンプやってくれてたからセリフも入ってるし」
「皆の本読みも付き合ってくれてましたし」
「これからの時間は全部テンテンの為に使うから!」


何だかんだで毎回練習や撮影に参加して、半ば雑用として現場に出ていたテンテンなら、セリフも動きも一通りは入っている。
当初の目的からは軌道がずれるが、ホラー映画になるよりはいいというスタッフ間の意見だった。


「……分かったわよ」
「ありがとうございます!」


目をキラキラさせて泣いて喜ぶ助監督を横目に、テンテンにお礼を言う。
ガイ先生には自分から伝えておこう。完全カットは勿体ないので、先生のシーンはどこかで使わせてもらうつもりだ。

これはやはり、一生忘れられない文化祭となるに違いない。





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