text

□ビンヅメフルーツ
1ページ/2ページ






「何でこんな任務回ってくるかなー」
「お前が適任だからだろ」
「下忍でもないわよこんなの」
「テンテン、任務に大きい小さいはありませんよ!」
「分かってるけどさ」


「プライベートで来たかったわよ」
ぼそりと呟いたテンテンを横目に苦笑いを浮かべるネジとリー。
プライベートという言葉に似合わず、入口の大きな暖簾が風になびいている。


「俺達は女湯に入るわけにはいかないからな」
「大丈夫ですよ。ちゃんと見張りはしますから。出てきたところをお縄です!」
「出る前にボコボコにして、入ってきたことを後悔させてやるわよ」
「「……」」


今回の依頼は里の銭湯からだった。
最近女湯の脱衣所で盗難が多発しているため、犯人を突き止めてほしいというものだ。


「じゃあ、1時間後に」
「のぼせるなよ」
「大丈夫よ。リーじゃあるまいし」
「あれは修行の一環で、」
「ただの我慢大会だろ」
「み、水は持って入った方がいいですよテンテン!」
「ハイハイ。ありがと」

「何かあったらすぐ行きますから!ね!ネジ!」
「だから俺達は中に入れないだろ」


この銭湯にはもう何度となく足を運んでいる。
任務の疲れを取りに。修行の後に。ちょっとした息抜きに―――特に夕方は意外とすいていてゆったりできるのだ。

今日は朝から客や建物について聞き込みをし、事件が多発している昼過ぎから夕方にかけての時間で張り込みをすることになっていた。



「ネジ!僕達もお風呂に入りませんか?」


張り込みを始めて20分。
店はすいていて客もまばらだった。


「何言ってるんだ」
「いや、問題は女湯だけではないかもしれないじゃないですか」
「任務中だぞ」
「じゃあ、交代で。もしかすると「お前、」

「風呂に入りたいだけだろ」
「えっ!?」


嘘が下手なのは昔からだ。


「この前は何だかんだで入りそびれたからな」
「ち、違いますよ!確かに任務後のひとっ風呂はいいですけど、」
「動揺しすぎだ。だからのぞきだと疑われるんだ」
「あ、あれは!まだ疑ってたんですか!?」
「任務が終わったら好きなだけ浸かってこい」
「ネジ!僕はのぞきなんてやってません!信じて……あれ?」


女湯の暖簾は揺れなかったが、何かの気配を感じて足元を見ると、相手もちらりと2人を一瞥し何食わぬ顔で通り過ぎた。


「何でネコが、」
「何かくわえてましたね」
「「……あ」」


盗難にあっていたのは鍵や髪飾りなどが主だった。たまに衣服が盗られることもあったが、何故か金目のものは無事だったのだ。

ネコはすたすたと銭湯の入口にある番台に消えた。
後を追って覗き込んだ先には、今まで行方不明になっていた物達がキラキラと光っていた。


「こんなところに」
「見つからないわけだ」
「あ、テンテンにも知らせないと」
「……どうやって」
「……えっと、」
「フルーツ牛乳で許してもらおう」
「そうですね」


張り込みを始めて30分。
犯人確保及び盗難品発見。戦利品にフルーツ牛乳3本を手に入れた。





→おまけ+あとがき
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ