その他

□狂気の国のアリス 1
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 ――気ちがいのアリス――これが日向有住(ヒムカイアリス)の別名でした。
 ゴシックロリータと呼ばれる服を着て街を歩く姿は異様でしたし、何より不気味でした。尋常ならざる白い肌。腕から覗くすらりと伸びた手首には、無数の傷がありました。それを隠そうともしないで、アリスは今日も歩いていきます。

 水銀灯の灯の下を。



  ”アリスは暗い穴の中”

 机にばら撒かれたトランプ。その中に血の付いていないものはありません。アリスは中でも一番汚れたハートのキングをとり、憑かれたように言うのです。
「さぁ、王様?その手に持った短刀で、私の体を引き裂いてくれる?」
 カッターの刃を目一杯出し、手首に押し付け、引きました。
 「くっ…」と小さな声が漏れました。
 皮膚が裂けて、血が腕を伝います。
「くっ…フフ…フフフ…クスクスクス……」
 ぽたり、とハートのクイーンに血が落ちました。
「やっぱり赤いお化粧が似合うわね?女王様?貴方もそう思うでしょう?ウサギさん…」
 チョッキを着て金の鎖時計を首からかけた、ウサギのぬいぐるみに、アリスは問い掛けます。ウサギの瞳代わりの紅い釦が、片方取れかかっていました。


 止血をしないため、体中から血が失われていきます。白い顔が蒼くなり、

 アリスは闇に呑み込まれました。


”オイデ アリス ボクラノセカイヘ キミニハアカガ 

 ヨクニアウ”




続く。


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