その他夢

□魔法
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「あいつをどう思う?」
神威は傍らのスネイプに耳打ちをする。ロックハートの事だ。
「どう思うも何も、あれはただの変態だろう」
「じゃあ、そう言ってやらないと」
「…関わりたくはない」
「そうかい」
神威は致し方ないと立ち上がった。
「そう言えば、スネイプ教授殿?いつ本当の事を言うんだい。あの、坊やに。…そうとう嫌われているぞ」
「言うつもりはない。カムイ、お前も余計なことは言うな」
語尾が強い。カムイは分かったよ呟いた。
食事もそこそこに立ち上がると、深い緑のローブを翻して、カムイはドアの側にいたフィルチに向かう。
「フィルチさん、そろそろ行きましょうか」
「はい」
「寮長は食事が済み次第、寮生を責任を持って連れて帰ること。部屋からは出るなよ。ドルバーグに喰われたくなかったらな」
カムイはフィルチを伴って部屋を出た。
「ねえ、所であの人誰?」
顔中に刺青が施してある。服から覗く部分にも。背も高い。
「え、知らないの?会ったことなかったかなあ。あの人はね、カムイだよ。ホグワーツの守り人さ。ホグワーツで何かが起きるとカムイが処理をするんだ」
「先生…?」
「んー、先生ではないと思うわ」
「そう言えば、魔法使いって訳でも無いみたいだし」
「じゃあ、普通の人?マグルにしちゃ、変わりすぎだよ」
「カムイなら…」
いつの間に後ろにいたのだろう。スネイプが蔑む様にハリーとロン、ハーマイオニーを見つめている。
「関わらない方がお前たちの身のためだぞ」
スリザリン生が寮に戻るのについて出ていくスネイプ。
「なんで?」
「今夜、調べてみましょう」
「でも、ドルバーグが」
「ドルバーグは南の塔よ。図書室は東側。大丈夫よ」
ハリーの秘密のローブもある。抜け出して行くしかないだろう。ハーマイオニーは張り切っていた。

「だから、夜中に出歩くなって言っただろ…」
カムイはローブで三人を隠した。
「お前も、帰るところに帰りなさい」
カムイは刺青だらけの掌をドルバーグに向かい差し出す。
「ほら、この子達には構うな。早く行きなさい」
ドルバーグが大人しくなり、カムイに頭を下げる。そんな光景始めてみた。
「フィルチさん、ドルバーグを南の棟へ連れていってください。大丈夫、絶対に暴れないですから。私はこの悪戯坊主たちを寮に連れていきますので」
ドルバーグは申し訳なさそうに頷いた。フィルチと共に部屋を出て南の棟の地下に帰っていった。
「さて、君達は…グリフィンドールだな」
「はい」
「ここまでどうやって来た……ああ。それか」
透明マントを指差して笑った。
「姿は消せても気配は消せない。気をつけて使いなさい」
「あなたは」
そのハーマイオニーの言葉を遮るようにカムイは声をあげた。
「…ああ!そうか!お前さんはハリーポッターか!」
「え?あ、はい」
「そのマントは父親のだな。悪戯好きだったよ。そう言えば、似ているなジェームスに」
わしゃわしゃと三人の頭を撫でる。
「さあ戻ろう。今夜はあまり安定が無い」
「安定?」
「空気の安定が足りない。…こういう日は夜に出歩かない方が良いぞ」
「っ!!」
びくりと震えたロン。
「何、私がいるから心配するな」
カムイは三人を満面の笑みで見下ろす。
「ドルバーグが大人しくなるところなんて初めて見ました」
「ハーマイオニ嬢はドルバーグを知っているんだね。私が先生なら五点を上げていたよ」
それにふふふっと笑うハーマイオニー。
「ドルバーグの通称は暴れ大熊。今日の月は三日月だ。興奮してしまったんだよ」
「興奮したドルバーグは人を襲うって」
「そうだね。特に、子供が好きなんだ。肉が柔らかいから」
「ひっ!!」
「大丈夫だよロンウィーズリー君。ホグワーツのドルバーグは虫歯だから肉は食べられないんだよ。その代わり、君達が持っていそうなお菓子が大好物なんだ」
「あ!…僕、飴入れてた」
ロンはごめんとばかりにしょんぼりしてしまった。
「なるほどね。今度から三日月の夜にドルバーグに追いかけられたく無かったら、お菓子は持ち歩かない方が良いな」
思っていた人と違っていた。
恐れて避けることはしなくて良さそうな人だ。

グリフィンドールの寮に彼らを連れていくと、カムイはそのまま自室に戻った。
「遅かったなカムイ」
「セブルス!…なんだ、いたのか」
「ドルバーグは」
「心配ないよ。今日の月に興奮しただけさ」
月の満ち欠けのカレンダーを手に取り、カムイは今日の日付を指差した。
「今日は三日月だったな」
スネイプは立ち上がり、手早く紅茶を入れるとカムイにつきだした。
「飲め」
「…本当に、優しいんだか、意地が悪いんだか分からないなお前は」
「うるさいやつだ」
それは怒っているわけではなくて。スネイプの声音は優しいものだった。
「どうして、言わないでいる?あんなに、あのハリーポッターを大切に思っているのに」
「その言い方はやめろ、気味が悪い」
カムイは知っていた。リリーが成し遂げたかった息子を守ることをスネイプがしていることを。
「はいはい。…そうだ、あのロックハートの事なんだが」
「その名前を出すな。苛々する…」
憎々しげに言うと紅茶を一口口にする。
「それじゃあ、何も話せないじゃないか」
「このまま下らない話をしていろ…」
「は?」
仕方が無いのでロックハートの怪しさを語ってみせる。
スネイプは杖を出しさっと唱えた。
「マフリアート」
「なんだ…どうした?」
そっと耳打ちされカムイは眉を寄せた。
「お前、本当に二重スパイしてるのか?」
「ああ。本当だ…」
「馬鹿か!」
「良いから聞け。ハリーポッターに何かあっては困るんだ。私があいつの側にいてやれなくなったら、カムイ、お前があいつの力になってくれないか」
「どこにいくきなんだ?ここにいる限り、側にいてやれるだろう?」
「ヴォデモートに呼びだされたら行かなくてはならん」
「でも」
「お前、ダンブルドア校長からの不死鳥の騎士団の誘いを断ったらしいな」
「それは、私の勝手だろう」
「まだ、気にしているのか?あんな、大昔の事を。覚えている者だって少なくなっている。私だって本と噂でしか知らない」
「…それでも。私は正義の人じゃない。不死鳥の騎士団には合わないだろ」
「外から支援するのか?支援するなら、なかに入れば良い」
「……いずれハリーポッターも不死鳥の騎士団に入るから、その時力を貸せるようにか?」
「そうだ。私とお前は似ている。だから、私はお前に頼みたい」
「…お前はその時、死んだりしないよな?」
スネイプはカムイの目を見つめて、フッと笑みを浮かべた。カムイはそれを見て溜め息をついた。
「もう、良いよセブルス。楽になりな。私が守ってあげるから」
「その言葉、そっくりそのままお前に贈ろう」
スネイプは一際変わった生徒だった。あまり人と一緒にいるところは見たことがない。だが、優秀で真面目でもあった。
『フィルチさんに見つからないように、本をとってきてやろうか?』
あれは、スネイプにとって五回目のクリスマス休暇だった。
『え?』
相変わらず本の虫のスネイプは、図書館でカムイに話しかけられ怪訝な顔をした。
『お前さん、あの禁書の闇の魔術の本見たいんだろう?』
『は?…なんで、あなたにそんなことを…』
『私はお前に興味があるんだ』
カムイはニンマリと笑って見せる。
『グリフィンドールの悪戯坊主達も面白いがな、お前さんの方が色々と深そうだ』
ここがとスネイプの胸をつつく。
『っ!よせ…』
その反応が初初しくてカムイは笑みをこぼした。
『私は魔法使いの善人や悪人の違いに興味はない。だが、お前さんという人間には興味があるんだ』
『…あなたは、本当に魔法使い?』
『誰が私を魔法使いだと言ったんだ?知りたければあの棚の一番上の右から三番目の本を読むことだ』
カムイが指を指したのは禁書の棚だった。
『じゃあね、セブルス君。ああ、読むときに背表紙をなでて、静かに』
翌日また同じように図書館にいくと、待っていましたとばかりにスネイプは緑の革張りの本を手に座っていた。
『読んだのか?』
『ええ。…二十五年前のホグワーツの悲劇の元凶。ドゥオーラの夜の女帝…』
『悲劇の元凶か。随分悪党に仕立てるなあ。私はダンブルドアに負けたんだ、そんなに仕立てなくても良いだろうに』
『アズカバンにいたって…』
『直ぐに出たよ。…代わりに、ここにいるだろう?監獄と同じさ。働かなきゃいけないがな』
カムイは実にあっけらかんとスネイプの質問に答えてくれた。
隠すほどの事ではないと。そして、スネイプはとくに年齢とその容姿の差に驚いた。
『私は死ぬまでこの見た目さ。そう言う種族なんだよ』
『今、幾つなんです?』
『四百二十五歳さ』
驚いた。再び目を丸くスネイプにそう言う種族なんだよと念を押した。
『さて、セブルス君。私の話し相手にならないかい?』
変わっている。それは、カムイにも同じことが言えた。



「ハグリット!」
翌日ハグリットを見つけたカムイは、刀研ぎの道具を借りるために一緒に小屋に向かう。
「カムイ!そういやあ、ダンブルドア先生がお前さんを探しておったぞ」
「ダンブルドア校長が…何でだと思う?」
「そんなの知るか。きっと今日はいるだろうから、顔を出したらどうだ」
「そう。分かった」
「先に先生の所にいってくるか?道具は出しておくから後で取りにくりゃあ良い」
「ありがとうハグリット。じゃあ、先にダンブルドア校長の所に行ってくるよ」
「おう!そうしてくれ。じゃあ、またな」

「カムイ。昨日はご苦労じゃったな」
「いえ、校長。仕事ですから…」
「うむ。それで、そうじゃ、カムイ。お前さん、いくつになったかの?」
「四百六十歳です」
「では、あれから」
「六十年になりますね」
「見た目は変わらんがな。中身は大人になったようじゃな」
カムイは何も言わずに苦笑した。
「脅すわけではないが。お前さんはわしに大いなる貸しがある。それを、騎士団に入り返そうとは思わんかね?」
殺しても良かったのに、ダンブルドアはそうはせずにカムイを生かした。人質と言う形で彼に手を貸すようにと。
困ったようにカムイは肩をすくめた。
「私は不死鳥の騎士団にはふさわしくありません。その代わり、外から必ずお守り致します」
「ふさわしいかふさわしくないかはわしが決めることじゃよ」
ダンブルドアはカムイの頭に手を置いた。
「ドゥオーラの夜の女帝の罪はわしが許そう」
「校長…」
「わしだって善ばかりで生きられたわけではないぞ。…お前さんの力が必要なのじゃ」
「なんと、お答えしたら良いのか」
「わしの力になっておくれ。そして、ハリーポッターの為にも、生徒達の為にも、全世界の魔法使いの為にも」
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