乱世[短編]

□好きの意
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「長曽我部元親っ」

 我は奴の城に着くと、ただ必死に駆け寄った。

「元就…?どうしたんだ、一体…」

「どうしたもこうしたもない。貴様が来なくなって数日間、我は何かに取り憑かれたかのように不安でたまらないのだ」

「え…?」

「貴様がいつものように来ないから……胸が押し潰される」

 声が震える。

 目元が熱い。

「元就、お前……」

 知らず知らずに抱きついていた。

 けれど、この手を離せば、またこいつは我の前に姿を現さない気がする。

 それは嫌なのだ…。

「元就…」

「っ…」

 何をびくついているのだ。

 ただ、名前を呼ばれただけではないか…。

「元就、こっちを向け」

「断る…」

 弱々しい声…。

 我はこんな人間ではなかったはずだ…。

「なぁ、向いてくれ」
 
「断るっ!」

「どうして…?」

 奴の顔を見る勇気がない。

 我は今、情けない顔をしているだろう。

 それに……。

「我は貴様を罵倒した…。あわせる顔がない…」

「じゃあ、何で此処に来た?」

「それは…」

 どうしてだ?

 別に来なくても良かった。

 だが、奴の居ない一時、奴の顔が常にちらついていた。

「ただ………」

「ただ?」

「会いたかったのだ…」
 
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