乱世[短編]

□好きの意
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「元就〜!!」

 聞き覚えのある声が、我が城内に響く。

 おそらく、奴だろう。

 そう予測をしていたら、ソレは勢いよく戸を開け放つ。

「元親、うるさいぞ。静かに出来んのか」

「何だよ、つれねーな。俺はわざわざ遊びに来てやったんだぜ?」

 何が、わざわざだ。

 誰も貴様が来ることを望んでなどいない。

「元就…?」

「何だ」

「お前、ちゃんと言いたいことは口にしろ?」

 何を言っているんだ、こいつは。

 奴の意図が全くわからない。

「俺と居るとき、いつも無口だから、お前が何考えてるかわかんねーんだ」

 わかられてたまるものか。

 そう易々と心意を読み解かれては困る。

「聞いてるのか?」

「聞いている」

「じゃあ、思ってること言ってくれよ」

 思っていること……。

「……鬱陶しい」

 そう口を開いた瞬間、元親の表情が暗いものになった。

 何をそう落ち込んでいるのだ?

「そう、か…。悪かった。今日はもう帰るな」

 奴はそう言い残すと、トボトボと帰って行った。

「…?」

 思っていることを言えと言われたから言ったのだ。

 我は何も悪いことはしていない。
 
 いずれまた、奴はいつもの表情でやって来るのだ。

 気にする必要は無いだろう。
 
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