Novel 1st

□アメシストは微笑って
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アメシストは微笑って
義+音





肌寒い日の雨は
バッカスの虎の牙
感覚が無くなるまで打たれて冷えて
石になる



「何してるんだよ」



腕を引かれて
気付けば戻る感覚

早鐘は早足に合わせた音程で
熱は与えられて僅かに戻る



「ネク君」

「何」

「何で戻ってきたの?」



ばたばたと
地に落ちて跳ねる雫は
バッカスの酒
あのまま石に成れたら
どれだけ楽だったろうか

少しの隔たり
雨宿り



「お前が居るから」

「そう」



とても綺麗なアズライト
濁ることは二度と無いだろう

殺されかけて石になる
ヒトには戻れないアメシスト



「やんだら 帰りなよ」



伝わる熱はまだ熱い

云いながら
この雨に永遠を願う
隔たりを溶かす葡萄酒の様に



「お前を」

「…」

ヨシュアを置いていったら意味ないだろ
  ......
 一緒に帰ろう」



石になったのは誰の意思だったか
運命なんて無いのだと
始めから判っていた筈なのに

綺麗なアズライトに映るアメシストは


   ....
「…ただいま

「おかえり」



神の気紛れで
命を奪われたアメシスト
世を呪わず
石にされたアメシスト

変わらない
変え様の無い昔話は
真っ白な本の中へ

待ち人へ
アメシストの瞳は微笑って言った





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