Novel 1st

□俺は
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手を振られて振り返す。

ハチ公前の待ち合わせ。

一週間ぶりに再会した彼等は何も変わってはいなかったものの、自分達を取り巻く状況は目に見えて変わっていた。

ゲームなんかに参加してない。

監視する死神もいなければ、人の思考もわからない。

そして、
俺達はこうして、生きてる。


変わっていく世界。

俺も、
少しは変わったのかな。

自分ではわからないけど、
ただなんとなく。

自然と笑顔になれるようになった気がする。

"友達"って、こういう事なのかな。


「ネク、どうかした?」

「ぼーっとしてんなよな!さっさといくぞ!」

「もうビィト、待てば海路の日和あり、だよ?」


気がつくと数歩離れたところに彼等は行ってしまっていた。

つってもよー、俺…腹減ったぜ。だなんて。

ビィトが彼らしい言葉を口にすれば、シキもライムもくすりと笑った。


「―、今行く」


笑って

小走りで彼等に走り寄る。


そして馬鹿話をして、また笑って。

一ヶ月前では考えられなかった自分の姿。

たまに自分でも驚いてしまう。


ヘッドフォンを外したあの時、いままで塞いでいた世界が聞こえるようになった。

なにかが変わったような気がした。

世界が広がったような気がした。




だけど、
なんでだろう。


何か足りない。

そんな感覚に襲われる。


だってほら、あいつがいない。

なんで、
お前はここにいないんだよ。


苦しいようなもどかしいような嫌な気持ち。

わけがわからない。


「…ヨ…ュア…。」


口から言葉が漏れた。

どうして。
なんで。

別に、いいんだ。
いいんだよ。

お前が俺を裏切ったのは確かに事実だよ、
だけど。


もう

会えない?





「……ヨシュア」


視界が滲む。

慌てて目を擦って三人の様子をうかがう。

…ああ、よし
見られてない。




振り返る。
ハチ公像。

なんだかあいつがいるような気がして。

そういえば、俺はあそこであいつに出会ったんだった。

パートナーとして契約を結んで。

七日間。




…なあヨシュア、
やっぱり会えないのかな。

俺はお前に、届かないのかな。

どんなに手を伸ばしても。





【俺は】
―…お前に、会いたい。




→おまけ+後書き
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