Novel 1st

□第一歩
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「あ…ヨシュア悪い、羽狛さんとこに忘れ物した。」


斜め前を歩く少年がふいに声をあげた。


「忘れ物?…へえ、ネク君もたまにはドジするんだね。」

「…っ、う」


ネク君は憤慨だけれど事実だから文句がいえない、そんな複雑な表情を浮かべると、

取りに行ってくるからそこで待っててくれと言い残して走っていってしまった。


「……ふう」


ネク君も仕方がないな。

ため息をつきながら休めそうなところを探す。

辺りをくるっと見渡すと、ビルの隙間からガラクタの塊のような物がのぞいていた。


「………。」


パートナーを一人にしたらいけないんだよ。ネク君。

心の中で呟く。
足は自然とガラクタへ向かって動いていた。


戻って来たとき僕がいなかったら、ネク君はどうするんだろうな。

漏れそうになる笑いを噛み締めると、義弥はカドイ前を離れていった。

その足取りはなんとなく軽いように、いつも通りのはずの微笑はどことなく嬉しそうに見えた。





オブジェ。

このガラクタを積み重ねただけに見える山を彼はそう呼ぶ。

彼にとっては創作活動であるから出来が良い悪いがあるようだが、こちらとしては皆同じようなガラクタに見える。

奇才なんて呼ばれる理由はここにあるんだろうと思う。

そしてそれは下から見上げるとなかなか壮観な眺めで、背景の高層ビルに馴染んで一つのグラフィティのようになっている。

けして美しいとは思わないが。


「さて、…と」


義弥はオブジェとその周辺を見た。

これらの物につきものな彼はいないように見える。


折角来てあげたのにな。


義弥はふう、とため息をつくと踵を返した。

その時だったか。


「……タ遅え…」

「!」


どこかくぐもったような声がした。

間違うはずもない。

たったいま探していた人物の、幼さの残る低めの声。


もう一度あたりを見回す。

自分とオブジェを挟んだ反対側に、わずかに赤い布のようなものが見えた。
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