Novel 1st
□約束
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「卒業おめでとう」
先生は笑っていた。
それはもう悪戯そうに、にこにこにこにこ笑っていた。
なんだよ、こっちは泣きそうだってのに。
「…ありがとうございます」
「なんだずいぶん暗いな、今更敬語なんて気味悪いうへ」
そう言って呆れたように彼は笑う。
ちょっぴり眉にシワをよせるような笑い方。
この三年、ずっと見てきた笑顔。
「ねえ出寺先生、俺」
「…きて、
起きてください先生、起きて」
「は、…?」
「起きてDTO、授業だよー」
視界に入る青い髪と、ぐるぐるめがね。
「…硝子に、満江?」
「もう授業始まってるのに先生が来なかったので呼びに来ました。」
硝子の台詞にハッとして時計を見る。
20分に始まる授業であるにも関わらず、その分針は35分を指していた。
「…あー…」
「DTOー、もう教室うるさくてうるさくて仕方ないないんだよ、早く!」
参ったな、と教材を手に席を立つと、硝子は呆れたように息をついた。
「しっかりしてくださいよ」
「…悪かった。」
まるで上司に叱られているような錯覚を覚え、修は二人に軽く頭を下げた。