Novel 2st

□平成怪奇譚
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ここが問題の幽霊屋敷です。我々は今からこの中を実況中継しようとしています。わたくし今からもう怖くて仕方がないんです、おわかりでしょうか、もう足ががたがたで…

深夜も間近な時間帯、テレビはざりざりと雑音を交えながら、女性レポーターと林の中にあるのだろう屋敷を映し出している。
いわゆる心霊番組という奴だ。
テレビにうつる屋敷はひどく古ぼけていて、もう長い間誰も手をかけていないことがわかった。
中へ向かうレポーターとスタジオが中継で繋がっているらしく、やめたほうがいい、というようなことを初老の女性が繰り返していた。

「KKそんな番組も見るんだ」
「見るものもなかったからな」

みるからに不気味な屋敷と中に入っていくレポーター。
引き攣った表情の女性は「これも仕事だから」とでもいうように、ひどく震えていた。
怖いものが嫌いなのだろう、可哀相に。

「KKは幽霊信じる?」
「…難しい質問だな」
「どうして?」
「信じるっつったら確実に俺はたくさんとり憑かれてると思うし」
「まあね」
「でも信じないっても、お前のパーティーにはお化けやら幽霊やらわんさといるし」
「…成る程」

数え上げたらキリがない。
信じる信じない以前の問題なのだ。
神も天使も幽霊も妖怪も、見るからにファンタジーなものはあらかた揃ってしまっていて、あのパーティーには行くたびに世界観を狂わせられる。
次回参加することがあったとして、その際にはいったいなにが増えているのだろうかと不安にすらなるが、もう何を見ても驚かない自信はあった。

流石にCS10で共演することになった某少女のように、地面からはいずり出て来られるのはごめんだが。

「じゃあ番組の邪魔してもいい?」
「ん?」

テレビに映る古びた洋館、悲鳴あげ逃げ出すリポーターやカメラマン。
映像を検証してみると、部屋にいるはずのない人影がぼんやり。
霊能者、なんて名乗る人々の表情が固くなる中、傍らの神様はさらりと一言。

「あそこ、百年くらい前のジズの別荘なんだわ」
「…は」
「で、確か今はメバエがいて、RGBの遊び場になってる」

もう一度、人影の映像が映し出される。
小さな少年。足は無く、ぼんやり映ったにやりと笑う笑顔には、縦に一本、糸の痕。

「…興ざめだな」
「だろ? じゃあなんか作ってよ、俺お腹空いちゃってさー」

笑顔の神様に見せ付けるようにため息をついて、テレビの電源を落とす。
ぷつん、と音をたてて液晶が消えるより早く立ち上がって、

「何がいい?」
「オムライス!」

にっこり笑う少年を見ながら、突然やってきて食べ物を要求する神様のほうが、余程怪奇現象なんじゃないだろうか、と、KKは小さく微笑んだ。


【平成怪奇譚】
―…不思議な影を背負った神様に追われる掃除屋KKさん。
 

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