Novel 2st

□それが悪だとしても
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神様にお願いがあります。
僕に力をください。
誰にも負けやしないくらい、強い強い力をください。

痣だらけの少年は、そう言って俺を見た。
真剣な瞳は湿っている。
ぽろぽろ雫をこぼしながら、少年はただただ俺を見つめていた。

「力…ねえ」
「………。」
「じゃあこうしよう、お前に願いを一つだけ叶える力をやろう。
どんな願いだって叶う。一度だけ、な。」
「本当に?」

笑って頷いてみせると、少年は嬉しそうに目を輝かせた。

面白いことになるかな、と。
そう思ったんだ。
虐められっ子で、誰にも愛されたことの無い孤児の少年が何を望むか、それにも興味があった。
ただそれだけだった、


のに。




「なん、て、こった」




痛い
痛いよ
どうして
どうして僕ばっかりこんな、
こんな目にあわなくちゃ、

虐げられその身に痣を増やしながら、少年は願った。




こんな世界なんていらない

みんな消えてしまえばいい

皮肉な光も
不安な闇も
苦痛な昼も
孤独な夜も
僕を苦しめる笑顔も
僕のせいの涙も
みんなも

なにより僕自身が
消えてしまえば、いい。


望まれた願いは
結果生まれたものは



(俺のせいだ)



なんにもないせかいで、
一人ぼっちになった神様はただただ涙を流しましたが、

その雫はどこへ落ちることもなく消えてしまいました。




(それが悪だとしても)

もはや誰を責めることも
責められることも
叶わない

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