ミニ2
□サンタの買い出し
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『んーどれがいいかなぁ…』
やってきたのは小物を扱うお店。品数も値段も丁度良いからとセバスチャンさん御用達のお店だそうです。
服からアクセサリーまで、本当にたくさんある…どれを誰に買おうかな?迷う…
───あ、これ…
目の前のそれに手を伸ばした、が
『っ!』
すぐに引っ込めた。
誰か他の人の手と重なりそうになったのだ。
謝ろうと恐る恐る隣の人の顔を伺う。
『…え、』
「おや。貴女様もコレを?」
『は、はい。ちょっと気になって…(セバスチャンさんだった)』
「ちなみにどなたにお贈りしたいと思いましたか?」
『え?ええとですね…』
いきなり変なことを言い出すものだから言葉がつまった。(というよりいつの間にわきに来たんですか)
えっと、これは──…
『「シエル(坊っちゃん)」』
……え?
「クスッ、やはりね。そうだと思いました」
『な、なんでわかって…』
「わかりますよ。貴女の考えることは大体ね…それではコレ、買いましょうか」
『……いいんですか?私が選んだのなんかをシエルのプレゼントになんて』
「もったいないくらいですよ。それに、私も目をつけていましたからお気にせず」
『よかったぁ…』
言葉がハモったのとプレゼントの許可が下りたことにホッと息を吐く。
次に顔を上げた瞬間、私は遠くのテーブルに並ぶそれに釘付けになった。
『……』
「どうかなさいました?」
『はい、まぁ…』
「…男ですか」
『Σ違いますよ!そんなことしたら後々怖いです』
「よくわかってらっしゃる。後々怖いですものね…こんな風に、私が」
『っん、』
くいと顎を上げられて視界いっぱいにセバスチャンさんの顔。
そのまま下がってきた形の良い唇は頬にキスを降らせて、おしまいに鼻を軽くかじって戻っていった。
執事に咬まれた鼻を押さえてしばらく硬直。周りからの視線が刺さり、やっと意識は戻ってきた。
『ぃッや――っ(人前でなんてことを…!)』
「クスクス、」
『っも、先に外に出ててください!』
「おや、何故です?」
『恥ずかしいんですよ!この空気が…』
「そんな照れなくてもいいですのに」
ニヤリと微笑む彼を今以上に憎らしく思ったことはないです。
会計でも済ますのか、片手にお金とプレゼントを持つ黒い背中に手を添えて、私は店内追い出すように力を加える。
『…ッ買いたいものがありますから!』
「?そうですか。では、このくらいあれば足りますね」
『はい!』
「それじゃ、お待ちしております」
『よろしくお願いします!』
ある程度お金を渡して会計を済ます。
お釣りを受け取った時の笑顔に店内のお客さんや店員さんは釘付けに。
セバスチャンさんが出ていったのを確認すると、私はその隙をついて自分の買い物に走った。
***
―キィ…
『待たせちゃってすいません。セバスチャンさん』
「いえ、大丈夫です」
そう言うセバスチャンさんの吐く息は白い。空もどんよりと曇ってきて、冷え込んできたみたいだ。
寒かっただろうなぁ…トロくてすいません。帰ったら私が紅茶お出しします
キュッと買ったプレゼントが入る袋の端を握りしめた。
「―それより、何を購入なさったのです?」
『…ヒミツです』
「男へのですか」
『だから違………くない?』
「え、」
『…あ』
「……どういうことか、説明お願い出来ますかねぇ?」
『い゙(Σひぃ―っ!!)』
笑顔を真っ黒に染めて、袋と彼女に捩り寄る悪魔で執事。
奪おうと早足で追ってくる彼から逃げるべく、私もまた帰路を急いだ。
―クリスマスまで、コレをセバスチャンさんから死守出来るかが問題ですね…
逃げながらそう思いました。
おしまい☆
12/7〜1/7
続きは「サンタの就寝」となります。