小話
□必要
4ページ/13ページ
多分、自分のことを考えているときが、一番幸せなのだろう。
何でもない事柄に耳を傾けるより、自己主張したほうが、有意義だ。
だから、話の途中で自分の話を切り出したくなるのだろう。
「……それが、どうしたという……?」
一人、椅子に座って本を読みながら、呟く。
所詮は皆、自分のことしか考えていない。
他人を助けるのも、自分の身を守るため。
……或いは、それが自分の望みだからだろう。
生憎、自分にそんな生き方をする予定はない。
自分のために時間を使って、何が悪い?
勉強をするのも、空を見ているのも、本を読むのも全て、自分のため。
……何が、悪い?
「おい番長」
気付けば、声を掛けられていた。
「何」
「晴れてるし、外で遊ぼうぜ。番長が居たほうが、楽しいからな」
何故。
何故、自分が居ると楽しいのだろう。
……知っている。
自分を嘲笑うことを楽しむのだろう。
しかし、断れば鉄拳制裁が待っている。
「今、行く」
本を仕舞い、席を立つ。