書庫

□後宮2
1ページ/4ページ

アスランにとって、キラの記憶は、いつも日溜まりの中にあった。母と二人、田舎で暮らしていたあの頃。毎日が幸せだった。

母が戦に巻き込まれ死んでからも、そして、王子へ嫁ぐため都に移ってからも、幼い頃のその記憶だけが、アスランの支えだった。広い王宮で夜中目が覚めたとき、思い描くのはキラの姿だった。それは、母国が攻め入られ、捕虜としてこの国にやってきてからも変わらなかった。

初恋だったのだろう。アスランよりも小さく、弱かった彼だけれど、彼女にとっては誰よりも頼りになる味方だった。一緒にいるだけで安心できた。離れていても、彼のことを思うだけで、強くなれる気がした。心の中の、大切な宝物だった。

それを踏みにじったのは、他でもない、キラ自身だった。

「だめだよアスラン、まだ寝ちゃ」

「あ、んっ」

下からの突き上げに、アスランは、意識を引き戻された。キラの欲望を身に受け入れたまま抱き上げられ、玩具のように揺さぶられ続けている。もう、何度果てたか覚えていない。

「君は、自分から僕に抱かれに来たんだ。なのに、僕より先に寝ちゃダメだよ」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ