お題部屋

□ふいうち
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―苦しい

胸がしめつけられる苦しさから、呼吸ができない事にゆっくりと意識を闇の中から浮上させて、サイクスがゆっくりと重い瞼を開いた。
朦朧としながら、息苦しさとこの重みの正体は何なのかと意識を目覚めさせたサイクスは、すぐに口の中に違和感を感じた。
口が何かに塞がれているようで、舌が変に動かされている。
そのせいでうまく呼吸もできず、空気も遮断されていた。
口を塞ぐ正体は何か。目線を下に下げる

すぐに、朦朧としていた意識が覚醒した。
理解できない状況に、サイクスの身体が固まる。
自分の口を塞ぐその何かは、自分が目覚めた事など気付かずに夢中で口内を犯した。
水温をたてて、舌を捕らえて己の思うままに貪るその姿に、大きく顔をしかめた。何をしている

その驚愕の前に、息苦しさが先に感じられた。
少し長い時間口を塞がれ空気を遮断され、感覚の前に意識の問題を感じた。
口を引き剥がそうと、舌に反応を示した。
すると、大きくビクつくシグバールの舌。
顔を離すかと思えば、それでもお構い無しに口内を貪る相手に、サイクスの目が開いた。
疑問を浮かべながら、息の限界を感じて強制的に引き剥がそうと身体を後ろに引いた。
すると、逃さないとでも言うかように素早くサイクスの後頭部を抑えて激しく濃厚に口付けをせまって来た。強く押さえつけられ離れられない


「ん、っく……!」


シグバールのコートを強く掴み苦しさを訴えれば、やっと口が離れた。
すぐさま相手を突き飛ばして、袖を伸ばして唇を拭う。
必要以上に口を拭いながら、何をしているのかと恐ろしく相手を睨みつけた。
その相手はというと、余裕に笑って見せて、サイクスの瞳を捕らえる


「よぉ。おはよう」


返事はない。
返事をする方がおかしい状況だった。
目覚めたらイキナリそんな関係でも何でも無い者に口の中を犯されて、それでもその相手に親しく言葉をかわすなど、よほど無神経な者でしか考えられなかった。
当然にシグバールを睨みつけながら、口から袖を離して傷のついた顔を歪ませた。
眉間にできたしわが不信感を表している


「何をしている…!」


まるで怒りでも表すかのように、震えを混じらわらせて事の説明を要求した。
腕を組み、涼んだ顔でサイクスに口を開いた。
その顔には、いまだ抑えられない欲望の色が現れている
 
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