マクロスF小説
□貴方の誕生日に
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―もう最悪。すべては今日のために頑張ってきたのに、そんな時に限って体調崩しちゃうなんて。
「ねぇ、アルト……」
「どうした?辛いのか?」
私が体調を崩したのをどこかで聞き付けたらしく、彼はかいがいしく私の看病に勤しんでいる。
「もう充分よ。アンタ、ランカちゃん達に誕生日パーティーに誘われてるんでしょ?もし行きたいなら行っていいのよ。私は一人で何とかするし。」
「いや、オレはこのままお前の側に居る。アイツらがオレのために用意してくれたのに悪いけどな。もう連絡もしてあるから心配するな。アイツらだって自分達の事は気にしなくてもいいからお前の看病してやれって言ってくれてるしな。」
せっかくの誕生日なのに祝われなくても彼は平気なのだろうか?私なら祝われたい。
「私のせいでごめんなさい……」
「謝るなって。お前がオレの誕生日のためにスケジュールを詰めて仕事してたの知ってるし。今日一日はオレと一緒に過ごせるように調整してくれたんだろ。まあ、理想通りにはいかなかったけど図らずも二人きりになれたしな。」
予定が狂い落ち込むシェリルをアルトは優しく慰める。
「優し過ぎよ、アルトは。もっと怒ってくれてもいいのに。」
「何で怒るんだ。愛しい彼女が自分のために努力してたのを怒れる訳ないじゃないか。むしろ褒めてやりたい位だ。」
歌よりも何よりも今日はオレを優先しようとしてくれた。その事が嬉しくて堪らない。
「んっ……風邪が移っちゃう……」
「いいよ、移しても。それでシェリルが元気になれるなら。」
アルトはそのままシェリルへのキスを続ける。最初は移しちゃいけないと抵抗してたシェリルも甘いキスに酔いしれアルトを受け入れる。
「体調治ったら、誕生日からは遅れちゃうけど用意してたプレゼントあげるわね。」
「じゃあ楽しみにしてる。」
こうやって一緒に居られる事が何よりものプレゼントなのだけど、それを言ったらまたいじけてしまいそうなので言うのをやめた。
「多分ね、喜んでくれると思うの……。」
「わかったから、もう寝ろ。良くなるものも良くならないぞ。」
薬が効いてきたのか、漸くシェリルは眠りについた。
「ありがとな。シェリル」
眠るシェリルに再びキスをして、アルトは看病を再開させた。
―シェリル、風邪が治ったら覚悟してろよ?今日触れられなかった分存分にお前を味わうんだからさ……
【終】