Novel

□蓋を開ければ百合二つ
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稽古も一息つくと
母・小夜から呼出しがあった。




「稽古より話が先だ。今日はここまでにする」


「はい」





百合は少し残念そうに普段着に着替え小夜の部屋へ行く。





「‥にしても、なんだろ。面倒事じゃないといいけど」





小夜の部屋の前で深呼吸をし
入った。





「きたか。座るがよい。単刀直入に言うが良いかの」





百合は姿勢を正し頷いた。





「そなたに露家を継がせる」


「え‥婿をとるではなくてですか?」


「男とてそなたほど文武両道優れている者はそうはおらぬ。いたら考えるが」


「私でいいんですか」


「あぁ。問題は無かろうて。うるさい蝿は実力で黙らせい」





不満そうな百合の姿を見て小夜はふっと微笑む。





「まぁ、先夜が死ぬまでは当主にはならせぬ。安心せい」


「死ぬって。父上にもう少し優しくしてあげて」


「あんな抜け作なぞ優しくする必要なんてあらぬわ」





ふん。とそっぽをむく小夜。
父上、可哀相に。





「‥王の傍付きか」


「不満か」


「いいえ。光栄です。現代の王は尊敬していますので。」






露家は代々王に仕え
王の盾、矛となる使命がある。

いざというときに守れるよう日々武芸を学ぶのはこのためであり、政治面に対しても同じである。


‥現代の王はと少し強調されたのは気のせいだろうか。

小夜は少し言いづらそうに




「そういえば世話係も含めると言っておったの。そなたとはしばらく会えぬが修行は怠らぬこと。あと、現在の王は先夜が付いておるため、そなたはは次期王につくことになる」


「‥は?次期王っ?!嫌ですよ!!!
しかもなんで世話係まで!」





気のせいではなかった。小夜は困った顔をし





「詳しいことは王に聞くがよい」




とだけ伝えた。
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