00長編

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伊織は次の言葉が出せなかった。
Sランクの秘匿義務に値するマイスターの個人情報。
刹那がエクシアのコックピットから出てしまったということは、それを侵す行為でもあった。
相手側のコックピットも開き、その中からは男性パイロットが出てきた。
刹那は容赦なく銃を構える。



『伊織!』

「ロックオン!」

しばし呆然としていた伊織を連れ戻したのはロックオンだった。
いつもとはうってかわって、その表情は険しいものだった。

『刹那がやらかした。
俺は地上から撃つから、お前は上からやってくれ!』

「了解!」

ジークレンの進路を、セカンドフェイスのポイントからエクシアのポイントへ移す。
移動を開始したコックピットの中で、伊織は少しの苛立ちを感じていた。





「刹那!」

伊織の声は、刹那のヘルメットのスピーカー越しに聞こえているはずだ。
だが刹那は、それに耳を貸すことなく銃を構えたままでいた。

『まったく、あいつは・・・!』

「なにを・・・!」

ジークレンのコックピットのモニターに映像が映った。
相手側のパイロットだった。
ヘルメットの偏光を解除してあり、中の人物の顔を見ることができる。
伊織は、その人物を凝視した。


ソレスタルビーイングに入ってから、“世界情勢の勉強”と偽って、あるテログループを探した。
そのテログループの名前は“KPSA”
主な構成員は、中東出身者。
その中に、この男がいたのだ。

「アリー・アル・サーシェス・・・」

昔のことがフラッシュバックする。
伊織のあの日の記憶の断片が、現れては消えて現れては消えた。
吐き気が込み上げるような、両親が死んだ日の記憶。



『伊織!』

伊織は我に帰った。
すぐさま自分のやることを思い出す。
ジークレンはライフルを一丁構えると、男が乗っていたMS目掛けて撃つ。
地上からのデュナメスと、上空からのジークレンの攻撃を受け、男はMSに乗り込んだ。
分が悪いと判断したのか、ガンダムに反撃せずに攻撃を避けながら撤退した。

『アイツ避けやがった!!』

「私が追う!」

ハンドルを一気に押し出そうとしたとき、ロックオンが伊織を止めた。

『止めろ、伊織!!』

「私はあいつを、」

仇を!

『忘れたのか!?伊織はマイスターだ!
ミッションを優先しろ!』

ロックオンは小さく、また独房入りしたいのかと言った。
伊織は言葉につまり、冷静になる。
機影は見えなくなっていた。


『ジークレン、一気にフェイズファイブまで移行して!
その後はエクシアの援護に行って頂戴。』

「・・・了解」

『んもー、あの子のせいでミッションプランが・・・』

スメラギの愚痴が、普通に耳に届いてきた。
ティエリアに至っては、「人と話す気分じゃない」と言ってひどく不機嫌だった。



『聞こえたか、ミススメラギの戦術通り、ガンダム全機、フェイズファイブへ移行する!』

「『『『了解!』』』」
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