00長編
□02
1ページ/13ページ
経済特区 日本にて
『武力介入を続けるソレスタル・ビーイングに対して、人類革新連盟は断固として、これに対することを表明しました。
また、ユニオンでは・・・』
アナウンサーの声と共に画面に映るのは、武力介入をしているガンダムの映像。
伊織は、持っている小型端末でチャンネルを色々変えていた。
どのニュースでも報道されているのはソレスタルビーイングのことばかり。
刹那は新聞を沢山買ってきて読んでいる。
こちらの方でも、一面を飾っていたのはやはり自分たちのことだった。
「あまり、良く思われていないね。私たち。」
「当然だな。」
「“ソレスタルビーイングの創設者イオリア・シュヘンベルク”
此処まで分かっているんだ。顔見せしたから当然か・・・」
「世界が変わる・・・」
刹那が鋭い目つきを見せた。
それを見た伊織は、一瞬だけ怖くなる。
そのまま彼女は端末を閉じた。
こうなることは、創始者であるイオリアの計画の範疇であったからだ。
「ねぇ、刹那。外に行かない?」
伊織は窓の外を見ながら言う。
今日は快晴。
「外?」
「良い天気だし。することないし。」
「どこか行きたいのか?」
刹那は立ち上がって伊織に尋ねた。
どうやら外出することには賛成のようだ。
「いや、特にそういうわけでもない・・・」
伊織は目線を泳がせながら言う。
外出しようと言ったくせに、行き先も何も考えていなかったからだ。
だが、刹那は伊織の手を取って部屋を出る。
「刹那?」
「近くなら、公園があった。」
公園があるなんてこと、伊織は全然知らなかった。
大きな噴水が中央に設置されていて、周りはカップルや家族連れで賑わっている。
刹那は空腹だったようで、ワゴンを見つけるやいなやホットドックを買ってきた。
伊織は特に何かを食べる気にもならなかったので、カップの紅茶を買った。
二人でベンチに座れば恋人のように見えるかもしれないが、生憎二人の間にそのような関係はない。
暖かな陽気の中で、伊織は次第に瞼が重くなってきたのを感じた。
こんなところで寝たら風邪を引くから駄目だ、そんな風に思いつつも、落ちてくる瞼に抗う術もなく。
「伊織?」
小さな肩の重みに気づいた刹那。
伊織は刹那によりかかって、小さな寝息を立てていた。
夢を見ている。
伊織は薄い意識の中で夢を見ている。
彼女は自分の真下を見た。
瓦礫の山だ。
今ここにいるのは公園のはずで、隣には刹那が居たはずなのに。
そう思って振り返る。
どろりとした赤黒いものが、視界の端に映る。
「刹那、」
振り返った先には、血で体を真っ赤に染めた刹那が横たわっていた。