甘味肆

□言葉無くとも(水戸部)
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「あっしたぁー!!」

体育館内に声が響く。
今日は夏休みなため一日練習だった。
マネージャーのなまえは体育館のそこら中にあるボトルを回収する。
他の部員は、各々片付けを始めている。

誰かがなまえの肩をつついた。
それに反応して振り向くと、そこには両手にボトルを持った水戸部だった。

「水戸部先輩、ありがとうございます!」

気にしないで。

とでも言いたそうに、水戸部は頭を横に振った。
非常に寛黙な水戸部が喋るのをなまえは聞いたことがない。
それでもなまえは、いつも自分を気にかけてくれる水戸部のことが大好きであった。

「お疲れ」
という言葉の代わりに頭を撫でてくれるのも、全部。
これが所謂「恋してる」っていうことなのだろう。


「水戸部ー、ちょっと来てくれー!」

キャプテンの日向に呼ばれて、水戸部はなまえの持つカゴの中にボトルを入れて、そのまま行った。
大きい背中だなぁと思いながら、なまえは水戸部を見送った。
なまえもまだやることが残っていたので、自分の仕事に集中することにした。
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